【歯科】犬の歯が欠けたら?|奥歯が折れた6歳ジャック・ラッセル・テリアの根管治療

犬の歯が欠けた…そのままで大丈夫?

「愛犬の奥歯が欠けているのに気づいた」
「ほかの病院で歯が折れていると言われた」
「ご飯は普通に食べているけれど、治療は必要?」

犬では、硬いものを噛んだことがきっかけで歯が欠ける・折れる「破折(はせつ)」がよく起こります。
欠け方によっては歯の中にある神経(歯髄)が露出していて、見た目以上に治療が急がれることがあります。

今回は、大きな骨などの硬いものを日常的に噛んでいて、上の奥歯が欠けてしまった6歳のジャック・ラッセル・テリアの症例をご紹介します。

症例|6歳のジャック・ラッセル・テリア

今回来院したのは、6歳のジャック・ラッセル・テリアさんです。
かかりつけの動物病院で「左の奥歯が折れている」と言われ、当院の歯科専門診療を受診されました。

飼い主様からお話を伺うと、

  • 硬いものが大好き
  • 一緒に暮らす大型の犬と同じ、大きな骨も食べている
  • 1歳ごろから週2回の歯みがきを続けている(歯の外側のみ)
  • 最近は右側で噛んでいるように見える

とのことでした。

診察の結果、左上顎第四前臼歯(歯の番号では208)の複雑破折が見つかりました。
あわせて、左下の奥歯に中程度〜重度の歯周病も見つかりました。

犬の欠けた奥歯(左上顎第四前臼歯の複雑破折)と露出した神経

「欠けた」と「神経が出ている」は大きく違う

歯が欠けたときに最も大切なのは、歯髄(神経や血管が通っている組織)が露出しているかどうかです。

  • 単純破折:エナメル質や象牙質だけが欠け、歯髄は露出していない状態
  • 複雑破折:割れた部分から歯髄が露出している(露髄)状態

今回の症例は複雑破折でした。
露出した歯髄は口の中の細菌に直接さらされるため、時間とともに炎症が進み、やがて歯髄が壊死します。
放置すると歯の根の先に膿がたまり(根尖病巣)、顔が腫れたり、皮膚に穴があいて膿が出てきたりすることもあります。

神経が露出していない「単純破折」の治療例は、犬の奥歯が折れたら?|硬いおやつで第四前臼歯が折れてしまった3歳ミニチュアダックスフントで紹介しています。

犬は歯が痛くても、ふつうにご飯を食べます

この子も、来院時に痛がるそぶりはほとんどありませんでした。
ただ、飼い主様によると「右側で噛んでいる」とのこと。左の痛みを避けて、反対側で噛んでいた可能性があります。

犬は歯の痛みを表に出さないことが多く、

  • 片側だけで噛む
  • 硬いものを避けるようになる
  • 口を触られるのを嫌がる

といった小さな変化しか見せないことがあります。
「食べているから大丈夫」とは限らないことを知っておいてください。

治療|根管治療で「抜かずに残す」

第四前臼歯は、食べ物を噛み切るときに大きな力がかかる、上顎で最も大きな歯です。
根が3本ある大切な歯なので、今回は抜歯ではなく根管治療(抜髄治療)で歯を残すことにしました。

根管治療の考え方や流れについては、折れた犬の歯は治せる?根管治療で「抜かずに残す」選択肢もで詳しく解説しています。

全身麻酔の前に、血液検査、胸部レントゲン、心臓の評価を行い、安全に麻酔をかけられることを確認しました。
そのうえで、麻酔下で次の検査・治療を行いました。

  1. 歯石除去:歯の表面や歯周ポケット内の歯石をスケーラーで除去します。
  2. 歯科レントゲン検査:歯の根や周りの骨の状態を確認します。
  3. 根管治療(左上顎第四前臼歯):3本の根それぞれから感染した歯髄を取り除き、根管の中を洗浄・消毒して、専用の材料で根の先まで緊密に詰めました
欠けた奥歯(左上顎第四前臼歯)の根管治療 治療前と治療後

破折した歯の治療は終了し、今後は経過を見ていきます。
根管治療をした歯は、一定期間ごとにレントゲンで根の先に異常が出ていないか確認することが大切です。

こんなものを噛んで歯が欠けることがあります

犬の破折の多くは、歯よりも硬いものを噛んだときに起こります。

  • 牛や豚などの大きな骨
  • 鹿の角
  • 蹄(ひづめ)
  • 硬いナイロン製のおもちゃ
  • 非常に硬いチーズやガム

「歯みがきの代わりになるから」「長く遊べるから」という理由で与えているものが、歯が欠ける原因になることがあります。
目安として、爪で押してへこまないものや、文房具バサミで切れないものは硬すぎると考えてください。

とくにほかの犬と一緒に暮らしている場合は、体の大きな子向けのおやつを小型犬が噛んでしまうことにも注意が必要です。

まとめ|犬の歯が欠けたら、早めに歯科チェックを

今回の6歳のジャック・ラッセル・テリアでは、大きな骨などの硬いものを噛んだことで左上顎第四前臼歯が欠け、神経が露出していました。

痛がる様子はほとんどありませんでしたが、根管治療を行うことで、抜歯せずに大切な奥歯を残すことができました。

犬の歯が欠けたときは、

  • 歯の真ん中にピンクや赤、黒っぽい点が見える
  • 片側だけで噛んでいる
  • 口を触られるのを嫌がる

といったサインがないか確認し、見た目の大きさにかかわらず、早めに動物病院で診てもらいましょう。
受診が早ければ、そのぶん歯を残せる選択肢も広がります。

歯が欠けたときのご自宅での対処法は、犬の歯が欠けたらどうする?放置してはいけない理由と正しい対処法を解説もあわせてご覧ください。

当院では、歯科専門診療で破折歯の診断と根管治療を行っています。「愛犬の歯が欠けているかも」と思ったら、お気軽にご相談ください。