東京動物皮膚科センター こんにちは。東京動物皮膚科センター／神宮前動物病院で歯科診療を担当している獣医師の森田です。
今回は、破折して神経が出てしまった犬の歯（露髄歯）に対して、根管治療を実施し歯を温存した症例をご紹介します。
「歯が折れたら抜歯しかない」と思われがちですが、実は**歯を残す治療（根管治療）**が可能なケースも多くあります。
🦴 犬の破折歯、よくある場所は？
犬でとくに折れやすいのは「第四前臼歯（しだいぜんきゅうし）」という奥歯です。
硬いおもちゃや骨を噛むことで、目に見えないヒビや欠けが生じやすい部位でもあります。
とくに以下のような症状が見られた場合は要注意：
- 歯の表面が欠けている
- 茶色く変色している
- ごはんを噛むときに違和感がある
- よだれ・口臭が増えた
🦷 今回の症例：右上第四前臼歯の破折と露髄
この子は、硬いものを噛む習慣があり、ある日「歯が欠けている」と気づかれてご来院されました。
診察と歯科レントゲンにより、**右上第四前臼歯が破折し、神経（歯髄）が露出（露髄）**している状態と判明。
👉 放置しておくと、感染が進行し、歯の根元の炎症（根尖性歯周炎）や痛みに発展するリスクが高いため、
**抜歯せずに歯を残す「根管治療」**を行いました。
🛠️ 犬の根管治療とは？流れを解説
根管治療とは、人の歯科治療でもよく知られている「神経を抜いて消毒・密封する処置」です。
この子の治療ステップは以下のとおり：
- ラバーダム設置（唾液による再汚染を防止）
- アクセスホール作成（歯の中へ到達する穴あけ）
- 歯髄（神経・血管）の除去
- 根管内の洗浄・消毒
- 根管充填（殺菌薬やセメントで密封）
- 歯冠修復（レジンや補綴で形を整える）
この歯は**三根歯（三つの根）**だったため、各根管に個別に処置を施しました。
✅ 根管治療のメリットと適応
根管治療には、以下のようなメリットがあります：
- 歯の機能（咀嚼・顎の構造維持）を保てる
- 外科的な抜歯より侵襲が少ない
- 見た目も自然に近い
ただし、以下の条件を満たしていない場合は抜歯適応となることも：
- 歯根が割れていない
- 骨の吸収が軽度
- 術後のケアが継続できる環境
📌 飼い主さまへ：歯の破折は早期発見がカギ
歯の破折や露髄は、時間との勝負です。
- 発見が早ければ「神経を残す治療」も可能
- 遅れると感染が進み、抜歯が必要になることも
✅ 歯が折れたかも？と思ったら、できるだけ早く動物病院で診察を受けましょう。
🏥 東京動物皮膚科センター／神宮前動物病院の歯科診療
当院では、破折歯や露髄に対して、
- 歯科用レントゲン・CTによる精密評価
- 根管治療・抜歯・外科処置までトータル対応
- 専門スタッフによる麻酔管理
で安全・安心の診療を行っています。
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東京動物皮膚科センター（歯科診療担当：森田）
TEL：03-3403-8012