【歯科】犬の歯ぐきにしこりが…「線維腫性エプーリス」と「棘細胞性エナメル上皮腫」の違いとは?|7歳ミニチュアダックスフンドの症例

犬の歯ぐきにしこりを見つけたら、病理検査だけで終わりではないことがあります

「歯ぐきに小さなしこりができている」
「生検をしたらエプーリスと言われた」
「棘細胞性エナメル上皮腫の可能性もあると言われて不安…」

犬の歯肉にできる腫瘤の中には、一見よく似た見た目でも治療方針が大きく異なる病気があります。

特に

  • 末梢性歯原性線維腫(旧:線維腫性エプーリス)
  • 棘細胞性エナメル上皮腫(Acanthomatous ameloblastoma)

は、初回の生検では鑑別が難しいことも少なくありません。
今回は、かかりつけ病院で生検を受けた後、さらに精密検査を目的に来院された7歳ミニチュアダックスフンドをご紹介します。


症例紹介|7歳ミニチュアダックスフンド

今回の患者さんは7歳のミニチュアダックスフンドです。

かかりつけ病院で歯肉腫瘤の生検を実施したところ、

「周辺性歯原性線維腫(線維腫性エプーリス)や棘細胞性エナメル上皮腫などの歯原性腫瘍が疑われます」

という病理結果でした。
どちらも歯から発生する腫瘍(歯原性腫瘍)ですが、治療方法は大きく異なります。
そのため当院では、全身麻酔下でさらに詳しい検査を行うことにしました。

症例の歯茎にできてしまったしこり

なぜ追加検査が必要なの?

病理検査は非常に重要ですが、小さな生検組織だけでは腫瘍全体の性質を判断できないことがあります。
特に棘細胞性エナメル上皮腫では、

  • 骨への浸潤
  • 腫瘍の広がり

によって治療方針が変わります。
そのため当院では

  • 口腔内検査
  • 歯科レントゲン
  • 必要に応じてCT検査
  • 追加生検

まで含めて診断を進めます。


線維腫性エプーリス(末梢性歯原性線維腫)とは?

現在では以前の

  • 線維腫性エプーリス
  • 骨形成性エプーリス

などは末梢性歯原性線維腫(Peripheral odontogenic fibroma)という診断名に統一されています。

特徴は

  • 良性腫瘍
  • 歯周組織由来
  • 骨へ浸潤しない
  • 遠隔転移しない
  • 完全切除で予後良好

です。

末梢性歯原性線維腫の治療ビフォーアフター

末梢性歯原性線維腫の治療例についてはこちら
犬の歯ぐきにできた「しこり」の正体は?〜手術後1ヶ月の経過〜
犬の歯茎のできものは大丈夫?〜10歳ラブラドールの歯肉にできた歯周組織由来腫瘍の治療例〜


棘細胞性エナメル上皮腫とは?

一方、棘細胞性エナメル上皮腫は転移することはほとんどありませんが、
顎骨へ強く浸潤する局所浸潤性腫瘍です。

そのため

  • 周囲骨への浸潤
  • 歯槽骨の破壊

が認められる場合には、部分顎骨切除が必要になることもあります。
この違いがあるため、診断が曖昧な段階で「良性だから様子を見ましょう」と判断してしまうのは危険な場合があります。

棘細胞性エナメル上皮腫の手術前、手術後の比較写真

棘細胞性エナメル上皮腫の治療例はこちら
犬の口の中のしこりは良性?悪性?|7歳ラブラドールの棘細胞性エナメル上皮腫の治療例
犬の口の中に腫れ物を見つけたら〜7歳フレンチブルドッグ「棘細胞性エナメル上皮腫」の症例〜


CT検査が重要になる理由

棘細胞性エナメル上皮腫では、見た目以上に骨の内部へ広がっていることがあります。

骨浸潤のある歯の腫瘍

CTでは

  • 顎骨への浸潤範囲
  • 骨融解
  • 周囲歯根との位置関係
  • 切除範囲

を立体的に評価できます。

もし顎骨切除が必要となった場合にも、事前にCTを撮影しておくことで適切な手術計画を立てることができます。


今回の病理検査結果

追加検査・切除生検の結果、末梢性歯原性線維腫(Peripheral odontogenic fibroma)と診断されました。

病理検査では

  • 異型性は認められない
  • 分裂像を認めない
  • 骨形成を伴う線維性病変
  • 脈管侵襲なし

という良性腫瘍の特徴を示していました。
また、完全切除後の予後は良好で、骨への浸潤や遠隔転移は報告されていません。


犬の口の中のしこりは見た目だけでは分かりません

犬の歯肉腫瘤には

  • 末梢性歯原性線維腫
  • 棘細胞性エナメル上皮腫
  • 悪性黒色腫(メラノーマ)
  • 扁平上皮癌
  • 線維肉腫
  • 炎症性病変

など様々な病気があります。
そのため、見た目だけで良性・悪性を判断することはできません。

診断には

  • 歯科レントゲン
  • CT検査
  • 生検
  • 病理組織検査

を組み合わせることが重要です。


まとめ|犬の歯ぐきにしこりを見つけたら

  • 歯ぐきのしこりには良性・悪性の両方がある
  • 線維腫性エプーリス(末梢性歯原性線維腫)は良性で予後は良好
  • 棘細胞性エナメル上皮腫では部分顎骨切除が必要になることがある
  • 生検だけで判断が難しい場合はCTや追加生検が必要になることもある
  • 見た目だけで様子を見るのではなく、正確な診断を受けることが大切

🏥 東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院

当院では犬・猫の口腔内腫瘤に対し、

  • 歯科レントゲン検査
  • CT検査(必要時)
  • 切除生検
  • 病理組織検査
  • 部分顎骨切除を含む口腔外科

まで一貫して対応しています。

「歯ぐきのできものを指摘された」「生検結果について詳しく相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。