【歯科】犬の歯ぐきの腫れは炎症?腫瘍?|黒くないメラノーマだった9歳コーギーの症例

犬の歯ぐきの腫れは歯肉炎だけとは限りません

「歯ぐきが少し腫れている」
「前からあるから様子を見ていた」
「黒くないからメラノーマではないと思った」

実際の診療でも、このようなお話を伺うことは少なくありません。
しかし犬の口腔内腫瘍は見た目だけでは診断できず、悪性腫瘍が隠れていることもあります。
今回は歯肉全体の腫れを主訴に来院し、その中の一か所だけ急速に大きくなった病変が悪性黒色腫(メラノーマ)だった症例をご紹介します。


症例紹介|9歳コーギー

犬の口腔写真、歯肉が腫れている。
犬の口腔写真、歯肉が腫れている。

主訴は以下のような内容でした。

  • 歯ぐき全体が腫れている
  • 数年前から歯肉は厚みがあった
  • しかし一か所だけ数か月で急激に増大

口腔内検査では歯肉全体に慢性炎症を認めましたが、左上顎の歯肉だけは明らかに他とは異なる腫瘤を形成していました。
「長年ある歯肉炎」と「短期間で急速に大きくなる病変」は分けて考える必要があります。


麻酔下検査

全身麻酔下で

  • 歯科レントゲン
  • 歯周病検査
  • 歯石除去
  • 歯肉切除
  • 生検

を実施しました。
歯科レントゲンでは

  • 骨融解なし
  • 骨増生なし

でしたが、切除した腫瘤は病理検査へ提出しました。
骨に異常がないから腫瘍ではないとは言えないという点が重要です。


病理検査の結果

病理検査では乏色素性悪性黒色腫(Amelanotic malignant melanoma)と診断されました。

犬の口腔写真、後に乏色素性悪性黒色腫と診断された。

病理報告では、

  • 多形性・異型性の強い腫瘍細胞
  • 分裂像が非常に多い
  • junctional activityを認める
  • 悪性度はかなり高い

と評価されています。


黒くないメラノーマとは?

メラノーマというと黒い腫瘍をイメージされる方がほとんどです。
しかし犬ではメラニン色素をほとんど作らない「乏色素性(Amelanotic)メラノーマ」も存在します。

見た目は

  • ピンク色
  • 赤色
  • 肉芽のよう

に見えることも多く、炎症や良性腫瘍と区別がつきません
そのため黒くないから安心という判断はできないのです。


なぜ生検が必要なのか

口の中のできものは

など様々です。
見た目だけでは区別できないため病理検査による確定診断が必要になります。


メラノーマと診断されたら

犬の口腔メラノーマは局所浸潤・転移ともに起こしやすい悪性腫瘍です。

診断後には

  • CT検査
  • リンパ節評価
  • 胸部画像検査
  • 外科切除範囲の検討

などを行い、症例によっては

顎骨切除
放射線治療
免疫療法

などを組み合わせて治療方針を決定します。


まとめ

  • 犬の歯ぐきの腫れは歯肉炎だけとは限らない
  • 急速に大きくなる病変は注意が必要
  • 黒くないメラノーマ(乏色素性メラノーマ)も存在する
  • 歯科レントゲンだけでは診断できず、生検・病理検査が重要
  • 犬の歯ぐきにできものを見つけたら、早めの精密検査をおすすめします