【歯科】犬の口の中にできものを見つけたら?|正常な構造・腫瘍との見分け方・診断の流れを獣医師が解説

犬の口の中に「できもの」を見つけたら、まず確認してほしいこと

「口の中にピンク色のできものがある」
「歯ぐきが腫れている」
「腫瘍ではないか心配」

愛犬の口の中にできものを見つけると、とても不安になりますよね。
実際、口の中のできものには

  • 正常な構造
  • 炎症による腫れ
  • 良性腫瘍
  • 悪性腫瘍

など様々な原因があります。
見た目だけで良性・悪性を判断することは難しく、「様子を見ていて大丈夫なもの」と「早急に検査が必要なもの」が混在しています。
今回は、腫瘍と間違えやすい正常構造と、動物病院で行う診断の流れについてご紹介します。


腫瘍ではないこともある|正常な「切歯乳頭」

まず知っていただきたいのが、切歯乳頭(せっしにゅうとう)です。

犬の口腔写真、矢印は切歯乳頭を示している。

切歯乳頭とは、上顎の前歯のすぐ後ろ、口蓋(口の天井)の中央にある小さな膨らみです。
健康な犬でも認められる正常な構造であり、病気ではありません。
初めて見た飼い主様からは、
「口の中に腫瘍ができた」
「何か腫れている」
と相談を受けることも少なくありません。


切歯乳頭にはどんな役割があるの?

切歯乳頭の内部には切歯管(Incisive canal)という管があり、

  • 神経
  • 血管

が通っています。
また、犬がフェロモンなどの匂いを感じる際に関係する鋤鼻器(じょびき)へとつながる重要な構造でもあります。
正常であれば左右対称で、滑らかな表面をしています。


本当に注意が必要な「口の中のできもの」

犬の口腔内腫瘤の写真。歯に付着するような赤いできものが確認される。

一方で、口の中には治療が必要な病気も数多く存在します。
例えば、

などです。
見た目がよく似ていることも多く、肉眼だけで区別することは困難です。
そのため、「できもの=腫瘍」と決めつけることも、「様子を見れば大丈夫」と自己判断することもおすすめできません。


動物病院ではどのように診断するの?

口腔内腫瘤では、「何の病気なのか」を正確に診断することが最も重要です。
当院では、次のような流れで診断を進めています。


① 視診・触診

まずは、

  • 発生部位
  • 大きさ
  • 色調
  • 表面の状態
  • 出血の有無
  • 周囲の歯との位置関係

などを確認します。

同時に、リンパ節の腫れや顔貌の左右差なども評価します。


② 歯科レントゲン検査

歯科レントゲンの比較写真。左は骨増生を伴う腫瘍、右は正常な歯の写真。

見た目だけでは分からない

  • 顎骨への浸潤
  • 歯根との関係
  • 歯周組織から発生しているか
  • 骨融解の有無

を評価します。

特に歯周組織由来の腫瘍では、歯科レントゲンが診断に欠かせません。


③ 必要に応じてCT検査

犬の頭部CT写真。
骨に浸潤した歯の腫瘍が確認される。

腫瘍が疑われる場合には、CT検査を行うこともあります。
CTでは、

  • 顎骨への広がり
  • 鼻腔への浸潤
  • 周囲組織との位置関係
  • 手術範囲

を三次元的に評価できます。
特に悪性腫瘍では、治療方針を決定するうえで非常に重要な検査です。


④ 生検・病理検査

最終診断は病理組織検査によって行います。
できものの一部、または全体を採取し、専門機関で顕微鏡検査を行うことで、

  • 良性腫瘍
  • 悪性腫瘍
  • 炎症性病変

などを確定診断します。
見た目だけで良悪性を判断することはできません。


⑤ 診断に応じた治療

診断結果によって治療方法は異なります。
例えば、

  • 経過観察
  • 外科切除
  • 発生歯の抜歯
  • 顎骨切除
  • 放射線治療

など、その子に最も適した治療を選択します。
良性腫瘍でも再発しやすいものがある一方、悪性腫瘍では早期治療が予後に大きく影響します。


このような場合は早めの受診をおすすめします

以下のような変化がある場合は、早めに口腔内を診察してもらいましょう。

  • 急に大きくなってきた
  • 出血している
  • 潰瘍になっている
  • 食べづらそうにしている
  • 左右非対称になっている
  • 黒色や赤色など色が変化している
  • 口臭が強くなった

早期に診断することで、治療の選択肢が広がることも少なくありません。


まとめ|「できもの=腫瘍」とは限りません

犬の口の中のできものには、切歯乳頭のような正常な構造から、良性腫瘍・悪性腫瘍までさまざまな原因があります。
だからこそ、

  • 見た目だけで判断しない
  • 歯科レントゲンなどで詳しく調べる
  • 必要に応じてCT検査や病理検査を行う

ことが重要です。
愛犬の口の中に気になるできものを見つけた場合は、「様子を見る」だけではなく、一度詳しい検査を受けることをおすすめします。


🏥 東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院

当院では、

  • 歯科レントゲンによる精密診断
  • 口腔内腫瘤の診断
  • 生検・病理検査
  • CT検査(必要に応じて)
  • 歯周組織由来腫瘍・口腔腫瘍の外科治療

まで一貫して対応しています。

口の中のできものや歯ぐきの腫れが気になる場合は、お気軽にご相談ください。