【歯科】犬・猫の歯石除去はいつするべき?|早めのスケーリングと歯科診療の大切さ

「歯石がついてきたけれど、まだ歯磨きで大丈夫?」
「歯石除去は何歳くらいから受けた方がいい?」
「一般的な動物病院と歯科に力を入れている病院では、何が違うの?」

犬や猫の歯石除去を検討するとき、このような疑問を持つ飼い主様は少なくありません。
歯石除去(スケーリング)は、歯を白くするためだけの処置ではありません。歯周病の進行を防ぐための歯科治療の一部であり、歯ぐきの下に隠れた病気を見つける機会でもあります。

今回は、早めに歯科診療を受ける意義と、歯科に力を入れている動物病院で治療を受ける際に確認したいポイントについて解説します。

犬・猫の歯石は、歯磨きだけでは取れません

犬が歯磨きしてる写真

歯の表面に付着した歯垢(プラーク)は、細菌を含む柔らかい汚れです。歯磨きによって取り除くことができますが、時間が経過して石灰化すると歯石になります。

一度形成された歯石は、通常の歯磨きでは取り除くことができません。
ただし、歯石の量と歯周病の重症度は必ずしも一致しません。
歯石が少なくても歯ぐきの下で歯周病が進行している場合があり、反対に歯石が目立っていても歯を支える骨が比較的保たれている場合もあります。

そのため、見た目の歯石だけで治療の必要性を判断するのではなく、口腔内全体を評価することが大切です。

早めにスケーリングを受ける意義

1.歯を支える骨が失われる前に対応できる

歯周病が進行すると、歯肉だけでなく、歯を支える歯槽骨や歯周靭帯にも炎症が及びます。

初期の歯肉炎であれば、適切な歯科処置とその後のホームケアによって健康な状態への改善が期待できます。一方、歯槽骨が大きく失われた歯周炎では、歯石を取り除くだけで元の骨の状態に戻るわけではありません。

早い段階で検査と治療を行うことは、歯を残せる可能性を高め、将来的な抜歯を減らすことにつながる場合があります。

2.治療が大がかりになる前に対応できる可能性がある

歯周病が軽度の段階では、スケーリングや研磨を中心とした比較的シンプルな処置で終了することがあります。

しかし、重度歯周病に進行すると、抜歯、歯肉の切開・縫合、歯槽骨の処置などが必要になることがあります。複数の歯を抜歯する場合には、手術時間が長くなり、術後の疼痛管理や食事の調整も重要になります。

もちろん、早期の処置であっても全身麻酔には一定のリスクがあります。しかし、病気が進行する前に治療を検討することで、結果的に処置の範囲や身体への負担を抑えられる可能性があります。

3.歯磨きを続けやすい口腔環境を整えられる

歯石が多く付着し、歯肉に炎症や痛みがある状態では、歯磨きを嫌がる犬や猫もいます。
歯科治療によって歯石や炎症の原因を取り除き、口腔内の状態を整えることで、治療後の歯磨き指導やホームケアを始めやすくなることがあります。

スケーリングはゴールではなく、その後の歯周病予防を続けるためのスタートでもあります。

犬のスケーリング処置前後の比較写真

歯石除去は何歳から受けるべき?

「何歳になったら必ず歯石除去をする」という決まった年齢はありません。

歯石の付着や歯周病の進行には、犬種、体格、歯並び、歯磨きの習慣などによって個体差があります。特に小型犬では若いうちから歯周病が進行することもあるため、年齢だけで判断しないことが重要です。

歯石が目立つ、口臭が強くなった、歯ぐきが赤い、歯磨きで出血するなどの変化があれば、まずは歯科診察を受け、処置が必要な段階かどうかを相談しましょう。

歯科に力を入れている動物病院で受ける意義とは?

歯科診療では、歯石を取り除く技術だけでなく、歯の状態を正確に診断し、必要な治療を選択することが重要です。
病院を選ぶ際には、次のような検査や診療体制が整っているかを確認するとよいでしょう。

歯科レントゲンで歯ぐきの下まで評価する

犬や猫の歯は、見えている歯冠だけでなく、歯ぐきの下に長い歯根があります。
歯科レントゲンでは、歯根の状態、歯槽骨の吸収、根尖部の病変、猫の歯の吸収病巣(TR)などを確認できます。

見た目にはきれいな歯でも、歯根や骨に異常が見つかることがあります。特に猫では、歯石除去を目的に麻酔をかけた際に、吸収病巣などの隠れた病気が見つかることもあります。

歯科レントゲン機器とレントゲン写真

歯周プロービングで歯周病の進行度を調べる

歯周プローブという器具を使用し、歯と歯ぐきの間の深さ(プロービングデプス)や歯肉の状態、歯の動揺などを確認します。
歯周病は歯ぐきの下で進行するため、歯石の量や見た目だけでは重症度を判断できません。
歯科レントゲンと歯周検査を組み合わせることで、歯を残せるか、抜歯が必要か、どのような治療が適切かを検討します。

必要に応じて歯を残す治療や抜歯まで対応できる

歯石除去中に、破折、重度歯周病、歯の吸収病巣などが見つかることがあります。
その際に、歯冠修復、歯内療法、歯周外科、抜歯などの選択肢を適切に検討できることは、歯科診療の大切な要素です。

すべての歯を残すことが正解ではなく、感染や痛みの原因となる歯は抜歯が必要な場合もあります。反対に、状態によっては歯を残す治療を選択できることもあります。

無麻酔の歯石除去ではだめなの?

無麻酔で見えている歯石を取り除く方法では、歯ぐきの下の歯石や歯周ポケットを十分に処置することが難しく、歯科レントゲンや精密な歯周検査も行えません。

また、動物が動く状態で鋭利な器具を使用することには、口腔内の損傷やストレスなどのリスクがあります。
歯周病の診断と治療を目的とする場合には、全身麻酔下で気道を確保し、適切な検査とスケーリング、研磨を行うことが基本となります。

当院の歯科診療の流れ

東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では、まず歯科診察で口腔内の状態を確認し、飼い主様と治療の必要性や麻酔について相談します。
原則として初診当日に麻酔処置を行うのではなく、事前の検査や説明を行ったうえで、後日歯科処置を予定しています。

全身麻酔下では、必要に応じて歯科レントゲン検査や歯周プロービングを行い、スケーリング・研磨に加えて、見つかった病気に対する治療を検討します。
治療後は、歯磨きの方法や再診のタイミングなど、口腔内の状態に合わせたホームケアについてご案内します。

まとめ|歯石が気になったら、まずは歯科検査を

歯石除去は、歯が汚れてから行う美容的な処置ではなく、歯周病の予防と治療のための医療行為です。
早めに歯科診療を受けることで、歯を支える骨が失われる前に対応できたり、将来的な治療の負担を抑えられたりする可能性があります。

また、歯科レントゲンや歯周検査を行うことで、見た目だけでは分からない病気を発見し、歯を残すか抜歯するかを適切に判断することができます。
「歯石がついてきた」「口臭が気になる」「歯磨きを嫌がるようになった」という場合は、重症化する前に一度歯科診察をご検討ください。

東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では、犬・猫の歯石除去から歯周病の精密検査、必要に応じた歯科治療まで対応しています。歯科診療についてのご相談は、お電話またはホームページからお問い合わせください。