【歯科】猫がご飯を食べない原因は口の病気かも|20歳猫・扁平上皮癌と診断した症例

猫がご飯を食べないのは「高齢だから」だけではありません

こちらを見ている猫の写真

「最近、ご飯を食べなくなった」
「よだれが増えてきた」
「口を気にして痛そうにしている」

このような症状は、高齢猫によくみられます。
「年齢のせいかな」と様子を見てしまうことも少なくありませんが、実際には口の中の病気が原因となっていることがあります。

猫では

  • 歯周病
  • 猫慢性歯肉口内炎(FCGS)
  • 歯の破折
  • 口腔腫瘍

など様々な病気があり、その中でも注意が必要なのが扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)です。
今回は20歳の日本猫で、食欲低下をきっかけに扁平上皮癌が見つかった症例をご紹介します。


症例紹介|20歳 日本猫

今回の患者さんは20歳の日本猫です。
来院のきっかけは

  • ご飯を食べない
  • よだれが出る
  • 口を痛そうにする

という症状でした。
口腔内を詳しく診察すると、左下顎の歯肉の退縮を認めました。
さらに下顎を触診すると、正常とは異なる硬い膨らみが触知されました。


レントゲン検査で骨の異常を確認

レントゲン検査を実施したところ、下顎骨に明らかな骨の腫大を認めました。
猫の口腔腫瘍では、歯肉だけでなく顎の骨へ浸潤していることが少なくありません。

そのため、見た目だけではなく、レントゲン検査による骨の評価が非常に重要になります。

猫のレントゲン写真。下顎に腫大した硬組織を認める。

生検で確定診断

レントゲン検査後、鎮静麻酔下で腫れている歯肉の一部を採取し病理組織検査を実施しました。
その結果、扁平上皮癌(Squamous Cell Carcinoma)と診断されました。

病理検査では、

  • 歯や下顎骨を侵食・破壊しながら増殖する腫瘍細胞
  • 明らかな異型性
  • 有糸分裂像を認める悪性病変

であることが確認されています。

猫の口腔写真。腫瘍変化で歯肉が退縮している。

猫の扁平上皮癌とは?

猫の口腔内に発生する悪性腫瘍の中でも最も多い腫瘍です。
特徴は

  • 下顎や舌の下に多い
  • 骨へ浸潤しやすい
  • 強い痛みを伴う
  • 食べられなくなる

ことです。

病理検査でも、局所浸潤性が非常に強い腫瘍と評価されています。
遠隔転移は比較的少ないものの、局所で急速に進行するため、早期診断が重要になります。


扁平上皮癌はどのように診断する?

当院では、口腔腫瘍が疑われる場合には以下の流れで診断を進めます。

① 口腔内診察

  • 腫瘍の位置
  • 大きさ
  • 出血
  • 潰瘍
  • 歯周病の有無

を確認します。

② 歯科レントゲン検査

骨の

  • 融解
  • 腫大
  • 歯根への浸潤

を評価します。

③ 生検(病理検査

見た目だけでは診断できないため、

組織を採取して確定診断を行います。

④ CT検査

扁平上皮癌と診断された場合には、

  • 顎骨への広がり
  • リンパ節
  • 手術範囲

を評価するためCT検査を実施することがあります。


治療について

治療は

  • 外科切除
  • 下顎切除・上顎切除
  • 放射線治療
  • 緩和治療

などが選択されます。
どの治療が適しているかは、腫瘍の大きさ、骨への浸潤、年齢、全身状態によって異なります。

早期に発見できれば、選択できる治療の幅も広がります。


猫がご飯を食べないときは、口の中も確認しましょう

猫は痛みを隠す動物です。

そのため、

  • 食べない
  • よだれ
  • 口臭
  • 口を気にする
  • 顔を触られるのを嫌がる

といった症状だけが最初のサインになることがあります。
「高齢だから仕方ない」と考えず、口腔内の精密検査を受けることをおすすめします。


まとめ

  • 猫がご飯を食べない原因は口の病気のことがある
  • 扁平上皮癌は猫で最も多い口腔悪性腫瘍
  • 骨へ浸潤することが多く、歯科レントゲン検査が重要
  • 生検による病理検査で確定診断を行う
  • 食欲低下やよだれ、口を痛そうにする症状があれば早めの受診がおすすめ

東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院

当院では犬・猫の口腔疾患に対し、

  • 歯科レントゲン検査
  • 生検・病理検査
  • CT検査(必要時)
  • 口腔腫瘍の診断・外科治療
  • 高齢動物の麻酔管理

まで一貫して対応しています。

「猫がご飯を食べなくなった」「よだれが増えた」「口を痛そうにしている」といった症状がある場合は、歯科疾患や口腔腫瘍が隠れていることがあります。気になる症状がありましたら、お早めにご相談ください。