犬の歯ぐきに「できもの」があったら、まずどうすればいい?
「犬の歯ぐきに赤いできものがある」
「歯の横がぷっくり腫れている」
「最近少しずつ大きくなってきた気がする」
犬の歯ぐきにできる「できもの」や「腫れ」は、決して珍しいものではありません。
原因には、
- 歯肉炎などによる炎症性病変
- 歯周病に伴う歯肉の増殖
- 良性腫瘍
- 悪性腫瘍
など、さまざまな病気があります。
問題は、見た目だけでは炎症なのか腫瘍なのか判断できないことです。
今回は、歯ぐきの赤いできものを主訴に来院した5歳トイプードルの症例をもとに、犬の口の中にしこりを見つけたときの診察から検査、治療までの流れをご紹介します。
症例紹介|5歳トイプードルの歯ぐきに赤いできもの
今回の患者さんは5歳のトイプードルです。
飼い主様が、「前歯の横の歯ぐきに赤いできものがある」ことに気付き来院されました。
口腔内を確認すると、上顎犬歯付近の歯肉に赤く丸い腫瘤状の盛り上がりを認めました。
軽度の口臭もありましたが、診察室で見ただけでは、
「炎症による腫れなのか」
「腫瘍なのか」
を判断することはできませんでした。

犬の歯ぐきのできもの|受診するとどんな検査をする?
口の中のできものでは、できものだけを見るのではなく、その下にある歯や骨まで確認することが重要です。
当院では、おおむね次のような流れで診断を進めます。
① まずは診察室で口の中を確認
最初に、
- できものの場所
- 大きさ
- 色
- 表面の状態
- 出血や潰瘍の有無
- 周囲の歯石や歯周病
- 歯のぐらつき
などを確認します。
ただし犬の口腔内を無理に触ることはできないため、意識がある状態で確認できる範囲には限界があります。
そのため、詳しい評価には全身麻酔下での検査が必要になることがあります。
② 歯科レントゲンで「できものの下」を確認
口腔内のできものでは、歯科レントゲンが非常に重要です。
確認するのは、
- 歯根の異常
- 歯槽骨の吸収
- 骨融解
- 骨増生
- 歯周病の程度
- 腫瘤と歯との関係
などです。
表面に小さなできものしか見えなくても、顎骨の内部で病変が広がっているケースがあります。
反対に、見た目は腫瘍のようでも骨に異常がなく、炎症性病変だったということもあります。

③ 生検をして病理組織検査へ
腫瘤の正体を確定するために重要なのが病理組織検査です。
病変の状況によって、
- 腫瘤全体を切除して調べる「切除生検」
- 一部分を採取して調べる「切開生検」
などを選択します。
特に悪性腫瘍が疑われる場合には、最初から大きく切除するのではなく、まず一部を生検して腫瘍の種類を確定し、その結果をもとに本手術を計画することもあります。
④ 必要に応じてCT検査
病理検査で腫瘍が疑われたり、歯科レントゲンで顎骨への影響が疑われたりした場合には、CT検査を検討します。
CTでは、
- 顎骨への浸潤範囲
- 鼻腔など周囲組織との関係
- 手術で切除すべき範囲
をより詳しく評価できます。
口腔腫瘍では、診断結果によって部分顎骨切除などの外科手術が必要になることもあるため、治療前の広がりの評価が重要です。

今回の診断は「増殖性リンパ球・形質細胞性歯肉炎」
今回の症例では、全身麻酔下で歯科レントゲン検査と腫瘤の切除生検を行いました。
病理検査の結果、増殖性リンパ球・形質細胞性歯肉炎と診断されました。
つまり今回は腫瘍ではなく、慢性的な炎症によって歯肉が増殖し、できもののように見えていた病変でした。
リンパ球や形質細胞といった免疫細胞が多数集まり、歯垢や細菌などの慢性的な刺激に反応して炎症が続いている状態です。
炎症性のできものだった場合の治療
今回の症例では、腫瘤の切除だけではなく、炎症の原因となっている口腔環境そのものを治療しました。
全身麻酔下で、
- スケーリングによる歯石除去
- 歯周ポケット内の清掃
- ルートプレーニング
- 増殖した歯肉の切除
- 必要な歯周病治療
を実施しています。
口腔内の炎症を起こしている原因をできる限り取り除くことで、その後の再発予防につなげます。

「赤いできもの=炎症」とは限りません
今回の症例は炎症性病変でしたが、犬の歯ぐきにできる腫瘤には、
などの腫瘍もあります。
特に重要なのは、赤い、ピンク色、出血していない、小さい、といった見た目だけでは良性・悪性を判断できないことです。
「少し様子を見よう」としている間に大きくなる病変もあるため、原因が分からない歯ぐきのできものは一度診察を受けることをおすすめします。
こんな歯ぐきの変化があったら早めに受診を
特に、
- 歯ぐきに赤いできものがある
- 以前より大きくなっている
- 歯ぐきが腫れている
- 出血する
- 表面がただれている
- 歯が動いている
- 口臭が急に強くなった
- 食べにくそう、口を気にしている
といった変化がある場合は、早めの検査をおすすめします。
口の中は普段見えにくい場所なので、歯磨きの際に歯ぐきまで観察する習慣をつけておくことも大切です。
まとめ|犬の歯ぐきにできものを見つけたら、まず正体を調べましょう
犬の歯ぐきにできものや腫れを見つけた場合、大切なのは**「腫瘍だろう」「ただの炎症だろう」と見た目だけで決めないこと**です。
診察で口腔内を確認し、必要に応じて、歯科レントゲン → 生検・病理検査 → CT検査
と段階的に調べることで、原因に応じた治療方針を立てることができます。
早い段階で診断できれば、より小さな範囲の治療で済む可能性もあります。
「犬の歯ぐきに赤いできものがある」
「歯ぐきの腫れが治らない」
「腫瘍ではないか心配」
という場合は、一度ご相談ください。
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院
当院では犬・猫の口腔内腫瘤について、
- 口腔内精査
- 歯科レントゲン検査
- 切開・切除生検
- 病理組織検査
- 必要に応じたCT検査
- 歯周外科・口腔外科
まで、診断結果に応じて治療をご提案しています。