【歯科】犬の前歯が抜けた?|実は歯根が残っていた11歳カニヘンダックスフントの症例

犬の前歯が抜けたように見えても、歯根が残っていることがあります

「犬の前歯が抜けた」
「前歯が欠けている」
「気づいたら歯が1本足りない」

このようなご相談は、歯科診療でよくあります。
しかし実際には、歯が丸ごと抜けたのではなく、歯冠だけが折れて、歯根が歯ぐきの中に残っていることがあります。

見た目では歯ぐきが閉じているため、飼い主様からは「歯が抜けた」と見えることもありますが、歯根が残ったままだと後から炎症や痛みの原因になることがあります。

今回は、11歳のカニヘンダックスフントの前歯の症例をご紹介します。


症例紹介|11歳カニヘンダックスフント

犬の下顎切歯の写真、折れている前歯が写っている。

主訴は「前歯が欠けた」というものでした。
診察で口腔内を確認すると、前歯が欠けているだけでなく、本来あるはずの前歯が1本足りないことが分かりました。
いつから無くなっていたのかは不明でした。

歯ぐきの状態を見ると、歯が自然に抜けたというよりも、歯冠が破折し、歯根だけが歯肉の中に埋まったまま閉じ込められている可能性が考えられました。


歯が抜けたように見えるときに確認すべきこと

犬の前歯がなくなっている場合、考えられる状態はいくつかあります。

  • 歯が丸ごと抜けた
  • 歯冠だけが折れて歯根が残っている
  • 歯周病で脱落した
  • 外傷で破折した
  • 歯肉が覆って見えなくなっている

この中でも特に注意が必要なのが、歯根が残っているケースです。


残った歯根を放置するとどうなる?

歯根が歯ぐきの中に残ったままになると、以下のような問題が起こることがあります。

  • 慢性的な炎症
  • 歯肉の腫れ
  • 痛み
  • 歯根膿瘍
  • 周囲の切歯への炎症波及
  • 歯槽骨の吸収

歯ぐきが一見きれいに閉じていても、内部に歯根が残っていれば感染源になる可能性があります。
そのため、犬の前歯が「抜けた」「なくなった」と感じた場合は、歯科レントゲンで確認することが重要です。


全身麻酔下で精査を実施

前歯のレントゲン写真。前歯の残根を認める。

今回は、欠けた前歯の治療と同時に、行方不明になっていた前歯の精査を全身麻酔下で行いました。
歯科レントゲン検査を行ったところ、予想通り歯冠が破折し、歯根が歯肉の中に取り残されている状態でした。


治療|残った歯根を慎重に抜根

治療後の前歯、折れていたところは修復し、残根は摘出された。

同じ麻酔中に、残存していた歯根を抜根しました。
前歯の周囲は歯が密集しており、歯槽骨も薄いため、処置には注意が必要です。

今回は、

  • 周囲の切歯を傷つけない
  • 歯槽骨をできるだけ温存する
  • 残根を取り残さない

ことを意識しながら、慎重に抜根を行いました。


まとめ|犬の前歯が抜けたと思ったら、歯根確認が大切です

犬の前歯がなくなっている場合、

「自然に抜けたから大丈夫」

とは限りません。

実際には、

  • 歯冠破折
  • 残根
  • 歯根膿瘍
  • 歯周病

が隠れていることがあります。

特に小型犬やダックスフントでは前歯の歯周病や破折が見られることも多く、歯科レントゲンによる確認が重要です。

「犬の前歯が抜けた」
「前歯が欠けた」
「歯が1本足りない」

と気づいた場合は、一度詳しく検査することをおすすめします。