【皮膚】JAK阻害薬シリーズまとめ〜正しく使うために知っておくこと〜

こんにちは。
東京動物皮膚科センターの馬場です。

JAK阻害薬シリーズの最終回です。
人でのJAK阻害薬の知見も踏まえながら、動物での使用についてのまとめをお伝えします。

人でも広く使われているJAK阻害薬

JAK阻害薬は人の医療でもアトピー性皮膚炎・関節リウマチ・潰瘍性大腸炎・円形脱毛症など多くの疾患に使われており、日本でも多くの薬が承認されています(アブロシチニブ、ウパダシチニブ、バリシチニブ、トファシチニブなど)。
その豊富なデータは、動物への応用を考えるうえでも参考になります。

人でのJAK阻害薬の副作用から学ぶこと

WHO国際ファーマコビジランスデータベース(12万件超の報告)の解析では、以下の副作用が示されています。
これらは主に高用量・長期投与での報告ですが、動物での使用でも念頭に置く必要があります。

感染症リスクの増加

 帯状疱疹・インフルエンザ・肺炎・結核・真菌感染。すべてのJAK阻害薬で増加

血栓・塞栓症

 深部静脈血栓・肺塞栓など。特定の薬でより多く報告

悪性腫瘍

 皮膚がん・血液腫瘍など。有意な増加の報告あり

消化管穿孔

 特定のJAK阻害薬(トファシチニブ)での報告が多い

【重要】動物用JAK阻害薬を人が自己使用することは絶対にやめてください。
実際に動物用のオクラシチニブを人が自己使用し、重篤なニューモシスチス肺炎(真菌性肺炎)を発症した症例が報告されています。

Oshima K et al., IDCases. 2025

2つのJAK阻害薬を比較する

項目オクラシチニブ(アポキル)イルノシチニブ(ゼンレリア)
主な阻害JAKJAK1(選択的)JAK1・JAK2(非選択的)
投与頻度BID(2週間)→ SID最初からSID
速効性高い(4時間以内に改善)高い
対象動物犬(猫は適応外)
長期安全性データ豊富(10年超)蓄積中
ワクチンへの影響影響なし影響なし

JAK阻害薬を正しく使うために

JAK阻害薬は、正しく使えばアレルギー性皮膚炎のコントロールに非常に有効な薬です。しかし大切なことがあります。

「JAK阻害薬はいい分子標的薬だけど、使う側の倫理観がないと分子標的薬の意味がない

つまり、薬の効果に頼るだけでなく、アレルギーの原因を探ること・アレルゲン回避と環境管理を組み合わせること・定期的な再診で状態を確認することが、本当の意味での治療につながります。

当院では、アレルギー性皮膚炎の根本的な原因を探りながら、適切な薬物療法を組み合わせた総合的な皮膚科診療を行っています。
「薬が効かなくなってきた」「副作用が心配」「もっとよい方法はないか」など、どんなことでもお気軽にご相談ください。

5回にわたってお読みいただきありがとうございました。

本シリーズは2025〜2026年時点の文献をもとに作成しています。治療方針は必ず獣医師にご相談ください。

ご相談はお電話 03-3403-8012 にてどうぞ