こんにちは。
東京動物皮膚科センターの馬場です。
JAK阻害薬シリーズ第2回は、犬のアレルギー性皮膚炎の治療薬として広く使われている「オクラシチニブ(商品名:アポキル)」についてです。
オクラシチニブはJAK1選択的阻害薬
オクラシチニブは主にJAK1を選択的に阻害することで、かゆみや炎症に関わるサイトカインの働きをブロックします。
特にIL-31(強いかゆみを引き起こすサイトカイン)の阻害が非常に強力です。
IC50(半分の効果を出す濃度)はわずか36 nMと、他のサイトカインと比べて際立って低く、少量でも確実にIL-31の信号を遮断できます。

📊 主なサイトカインの阻害強度(IC50)
- IL-31(かゆみ):36 nM ←最も強く阻害
- IL-2・IL-4・IL-6・IL-13:100〜250 nM程度
- エリスロポエチン(造血):1,020 nM
- IL-12・IL-23(感染・腫瘍免疫):3,000 nM超 ←ほぼ阻害されない
速効性が高い
臨床試験では、治療開始からわずか4時間以内にかゆみの程度(VASスコア)が急速に改善し、プレドニゾロン(ステロイド)と同等の即効性が示されています。
「今日からかゆみを楽にしてあげたい」という場合に適した薬です。
用法・リバウンドへの対処
標準的な使い方は、体重1kgあたり0.4mgを最初の14日間は1日2回(BID)、その後は1日1回(SID)に減らして維持します。
BIDからSIDに切り替えるタイミングで「リバウンド(かゆみの再燃)」が起こることがあります。これを防ぐ方法として以下が報告されています。
① プレドニゾロン短期併用
切り替え最初の4日間に0.5mg/kgを短期併用。リバウンド率を45%→15%に低下
② グルコルチコイドスプレー
局所スプレーの併用で症状の再燃を抑制(二重盲検試験で確認)
③ サプリメント(PSCO-524)
無作為化二重盲検試験にてリバウンド抑制効果が確認されています
④ 抗菌療法の削減
オクラシチニブ使用で全身性抗菌療法の使用率を最大100%削減できる可能性あり
アレルギー検査への影響は?
オクラシチニブ使用中にアレルギー検査(血清IgE検査など)を実施しても結果に影響しないことが確認されています。
検査のために薬をやめる必要はありません。
本シリーズは2025〜2026年時点の文献をもとに作成しています。治療方針は必ず獣医師にご相談ください。
▶ 次回:オクラシチニブの副作用と長期安全性
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