こんにちは。
東京動物皮膚科センターの馬場です。
今回から5回にわたって、犬や猫のアレルギー性皮膚炎の治療でよく使われる「JAK阻害薬」についてお話しします。
「アポキル」という薬を処方されたことがある飼い主さんも多いと思います。
この薬がどんな仕組みで働くのか、一緒に見ていきましょう。
分子標的薬とは?
かゆみや炎症は、体の中で「サイトカイン」と呼ばれる情報伝達物質が引き起こしています。
分子標的薬とは、このサイトカインの働きやその伝達経路をピンポイントで狙い撃ちする薬のことです。
従来のステロイドが「炎症全体をざっくり抑える」薬だとすれば、分子標的薬は「特定のスイッチだけを切る」薬といえます。
副作用の範囲を絞り込める点が大きなメリットです。
JAK-STAT経路とは?
サイトカインが細胞の受容体に結合すると、細胞の中では「JAK(ヤヌスキナーゼ)」というタンパク質が活性化し、その信号がSTATというタンパク質へ伝わって炎症・免疫反応が起こります。
これを「JAK-STAT経路」と呼びます。

💡 JAKは4種類あります
- JAK1:炎症・かゆみに関わるサイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31など)の伝達
- JAK2:造血・好中球の分化、感染免疫に関与
- JAK3:T細胞・B細胞の増殖・分化に関与
- TYK2:Th1・Th17細胞の分化、腫瘍免疫に関与
犬のアトピー性皮膚炎とJAK
犬のアトピー性皮膚炎(CAD)では、アレルゲンが皮膚に入り込むことでTh2細胞を中心とした免疫反応が起こります。
IL-4・IL-13・IL-31などのサイトカインが放出され、かゆみ・炎症・皮膚バリアの低下が連鎖します。
これらのサイトカインのほとんどがJAK-STAT経路を介して働くため、JAKを阻害することが治療の中心となります。
JAK阻害薬で最も重要なポイントは「どのJAKが阻害されるか」です。
薬によって阻害するJAKの種類が異なり、効果と副作用のプロフィールが変わります。
本シリーズは2025〜2026年時点の文献をもとに作成しています。治療方針は必ず獣医師にご相談ください。
▶ 次回:オクラシチニブ(アポキル)の作用と効果
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