「高齢だから麻酔は無理」と諦めていませんか?
「もう16歳だから全身麻酔は心配」
「心臓病があるので歯科治療は難しいと言われた」
高齢犬の歯科診療では、このようなお悩みを伺うことが少なくありません。
しかし実際には、年齢だけで治療の可否を判断することはできません。
重要なのは、
- 呼吸の状態
- 心臓の状態
- 血圧や循環の状態
- 腎臓や肝臓などの代謝機能
をしっかり評価し、適切な麻酔計画を立てることです。
今回は、顔の腫れを繰り返していた16歳のポメラニアンの症例をご紹介します。
症例紹介|16歳 ポメラニアン
飼い主様の主訴は、
「数か月に1回、目の下が腫れる」
「腫れた場所から出血することがある」
というものでした。
抗生剤で一時的に改善するものの、しばらくすると再発を繰り返していました。
原因は歯の根の感染(歯根膿瘍)

全身麻酔下で歯科レントゲン検査を行ったところ、
- 右上第四前臼歯
- 右上第一後臼歯
に重度の歯周病と歯根膿瘍を認めました。
歯根膿瘍とは、歯の根の先に細菌感染が起こり、膿がたまる病気です。
特に上顎の奥歯では、
- 目の下が腫れる
- 顔が腫れる
- 出血する
- 鼻水が出る
などの症状として現れることがあります。
治療内容
今回の症例では、
- 歯科レントゲン検査
- 右上第四前臼歯抜歯
- 右上第一後臼歯抜歯
- フラップ形成および縫合
を実施しました。
感染源となっていた歯を取り除き、抜歯窩は歯肉フラップを用いて丁寧に閉鎖しました。
高齢犬の麻酔で大切なこと
この子には、
- 心疾患
- 呼吸器疾患
がありました。
そのため術前には十分な検査を行い、鎮痛薬の選択、昇圧剤の準備、術前・術後の十分な酸素化、覚醒時の血圧モニタリング
などを徹底しました。また、高齢犬では麻酔時間が長くなるほど負担も増えるため、短時間で効率よく処置を完了できるよう事前に治療計画を立てています。
術後経過
術後は順調に回復し、
- 顔の腫れの再発なし
- 出血なし
- 食欲良好
という状態で経過しています。
飼い主様からも、「もっと早く治療してあげれば良かった」とのお言葉をいただきました。
まとめ|高齢犬でも歯科治療は検討できます
高齢犬の歯科治療で最も重要なのは、「年齢」ではなく「現在の全身状態」です。
もちろん若い犬と比較すれば麻酔の代謝が遅くなったり、術後の体調の持ち上がりは遅くなったりします。
しかし、
- 呼吸
- 循環
- 代謝
を事前に評価し、必要な対策を講じることで、安全性を高めることは可能です。
高齢だからと諦める前に、一度詳しく評価することをおすすめします。
歯の痛みや感染を取り除くことで、食欲や生活の質(QOL)が大きく改善することも少なくありません。