
「犬がおもちゃを噛んでいたら歯が欠けてしまった」
「歯が折れている気がするけど、痛がらずに元気そう」
このようなご相談は、当院の歯科診療でも非常に多く寄せられます。
飼い主様にお伝えしたい最も重要なこと、それは「痛がっていない=大丈夫」という考えは大きな誤解であるということです。
実際に当院では、歯が折れてすぐに受診していただいたことで、歯を温存できた症例が多くあります。
歯の破折(はせつ)は「早く気づいて、早く治療する」ほど、大切な歯を残せる可能性が高くなります。
このコラムでは、犬の歯が折れたり欠けたりしたときの正しい対処法、放置する危険性、そして具体的な治療の流れをわかりやすく解説します。
1. 「犬の歯が折れた!」すぐに行うべき正しい対処法3つ
犬の歯が折れたり欠けたりしていることに気づいたら、焦らず以下の3つのポイントを守って行動してください。
① 無理に歯磨きをしない
折れた断面に歯ブラシが当たると、強い痛みを生じることがあります。折れた歯の周辺は無理に歯磨きをせず、そっとしておきましょう。
② 歯の破片は捨てずに取っておく
もしも折れた歯の破片が落ちていたら、捨てずに保管し、受診時にお持ちください。治療方針を決める際の重要な参考になることがあります。
③ 早急に動物病院の歯科へ相談する
外見上は少し欠けただけに見えても、根の中や歯根まで折れているケースは非常に多いです。正確な状態を把握するためには、歯科用レントゲンによる精密検査が不可欠です。なるべく早く、歯科診療に対応している動物病院を受診しましょう。
2. なぜ犬の歯は折れる?よくある原因と折れやすい歯

「犬の歯は丈夫」と思われがちですが、実は日常の何気ない生活の中で簡単に折れて(破折して)しまいます。
【よくある破折の原因】
- 硬すぎるおもちゃ、ヒヅメ、骨などを噛む
- ケージの金属や石を噛む癖がある
- ボール遊び中などに強い衝撃が加わった
- 高いところからの転落
- 他の犬との激しい接触・衝突
【特に折れやすい歯】
- 上顎犬歯(じょうがくけんし): いわゆる「キバ」
- 第四前臼歯(だいしぜんきゅうし): 上顎の一番大きな奥歯
これらの歯は、「気づいたら欠けていた」「ある日突然短くなっていた」と後から発見されることが少なくありません。硬いものを噛む習慣がある犬は特に注意が必要です。
3. 痛がらないからと放置は危険!破折歯の恐ろしいリスク
結論から言うと、見た目がきれいで本人が痛がっていなくても、放置すると歯の内部で感染が進行します。
歯の内部には神経や血管(歯髄)が通っています。歯が折れて神経が露出すると、そこから細菌が侵入し、数か月〜数年かけて以下のような深刻な状態に進行することがあります。
- 歯髄炎・根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん): 歯の根の先に膿がたまる
- 内歯瘻・外歯瘻(ないしろう・がいしろう): 歯ぐきや目の下の皮膚が腫れて膿が出る
- 口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう): 歯の根元の骨が溶け、口と鼻がつながってしまう
- 慢性的な痛みによる食欲低下、元気消失
これらは静かに進行するため、症状が表面化して気づいたときには「抜歯」しか選択肢が残されていないケースが多々あります。
4. 時間が勝負!「神経が生きているか」で変わる治療法
破折歯の治療は、神経(歯髄)が露出しているか、すでに感染しているかで選択肢が大きく変わります。(※処置はすべて全身麻酔下で行います)
| 破折の状態 | 主な治療 | ポイント |
|---|---|---|
| 非露髄破折(神経露出なし) | 歯冠修復(レジン) | 感染予防・進行防止 |
| 露髄破折(神経露出あり) | 生活歯髄切断/根管治療 | 1〜2日以内なら神経温存可 |
| 感染・根尖病変あり | 根管治療/抜歯 | 徹底した感染除去が必要 |
【症例紹介】5歳 小型Mix犬(左上顎第四前臼歯の破折)
「硬いものを噛んで歯が折れた」と当院に来院された症例です。
折れてから数日以内の受診だったため、汚染した神経を除去する根管治療を行い、大切な奥歯を温存することができました。
① 全身麻酔・歯科用レントゲン検査 まず、第四前臼歯にある「3本の歯根」「神経の状態」「根の先の感染の有無」を歯科用レントゲンで正確に確認します。
② 根管治療(神経の処置) 歯の内部にある神経と感染組織を完全に除去します。3本すべての根管を個別に清掃・消毒し、無菌状態に近づけます。
③ 根管充填(封鎖) 清掃後の根管に薬剤や充填材を入れ、再び細菌が入らないよう密閉します。
④ 歯冠修復(レジン修復) 最後に、欠けた歯の部分を歯科用レジン(樹脂)で元の形に修復します。第四前臼歯は噛む力が強いため、形と強度を意識した修復が重要です。


5. 自宅でできる!破折に気づくためのチェックポイント
愛犬の歯を守るため、日頃から口の中を観察する習慣をつけましょう。
- 反対側の同じ歯と比べて、短くなっている
- 歯の断面にピンク色や黒い点(歯髄)が見える
- 歯の先が不自然に尖っている、または欠けている
- 歯全体が黒やグレーに変色している
当てはまる場合は、できるだけ早急に動物病院を受診してください。
まとめ|「痛がらない=大丈夫」ではありません
- 犬の歯が折れたら即受診が基本
- 1〜2日以内なら神経を残せる可能性が高い
- 放置すると感染が進行し、抜歯のリスクが高まる
- 破折歯の治療は時間との勝負
「そのうち治るだろう」「痛がっていないから平気」は通用しません。飼い主さんが気づいた「今」が、治療のベストタイミングです。
渋谷区神宮前で犬の歯科治療なら「東京動物皮膚科センター」へ
東京動物皮膚科センター(神宮前動物病院)では、犬の破折歯に対して歯科用レントゲンを用いた精密診断を行い、保存治療から歯科外科、再生療法まで一貫した専門的な歯科診療を提供しています。
「大切な歯をできるだけ残したい」 「今からでも治療が間に合うか知りたい」
とお悩みの飼い主様は、どうぞお早めに当院までご相談ください。
【お問い合わせ・ご予約】
電話番号: 03-3403-8012(歯科担当:森田)
アクセス: 東京都渋谷区神宮前(※詳しいアクセス情報は当院HPをご覧ください)