【皮膚】犬のアトピー・アレルギー治療薬④

アポキル・ゼンレリアは長く飲んでも大丈夫?

こんにちは。馬場です。
前回はアポキル、ゼンレリアの減らし方について解説しました。
ですが、基本的にアトピー性皮膚炎は、生涯にわたって付き合っていくことも多い病気です。

そのため、

「この薬をずっと飲んで大丈夫ですか?」
「免疫を抑える薬と聞いたけれど心配です」
「がんになりやすくなりませんか?」

といった質問をいただくことがあります。

長期間使用する薬だからこそ、効果だけではなく安全性について理解して使用することが大切です。

アポキルは長年の使用実績があります

アポキルは発売されてから長く、世界中の多くの犬に使用されてきました。

そのため、臨床試験だけでなく、実際に長期間使用した犬についての情報も蓄積されています。

一方、ゼンレリアはアポキルより新しい薬です。

これまでの臨床試験では良好な安全性が示されていますが、アポキルと比較すると実際の診療現場で長期間使用されたデータはまだ少なく、今後さらに情報が蓄積されていく薬といえます。

「免疫を抑える」ということ

アポキルとゼンレリアは、かゆみや炎症に関係するJAKという仕組みに作用します。

一方でJAKは、正常な免疫機能にも関係しています。

そのため、必要以上に免疫機能へ影響すると、感染症などが問題になる可能性があります。
これは「危険だから使わないほうがよい」という意味ではありません。

必要な薬を適切な量で使用しながら、皮膚や全身の状態を定期的に確認することが重要ということです。
特に、皮膚の細菌感染やマラセチア感染などが起きていないかを確認することは、アトピー性皮膚炎を良好に管理するうえでも大切です。

「JAK阻害薬でがんになる?」という疑問

人の医療でもJAK阻害薬が使用されており、一部の薬では感染症や悪性腫瘍などについて注意が必要とされています。

ただし、人と犬では使用する薬も投与量も病気も異なります。
そのため、人のJAK阻害薬で報告されているリスクを、そのまま犬のアポキルやゼンレリアに当てはめることはできません。

一方で、JAKは免疫に関係する重要な仕組みですので、長期間使用する場合には定期的に診察を受け、異常がないか確認していくことをおすすめします。

大切なのは「薬を使わないこと」ではありません

アトピー性皮膚炎の治療では、薬の副作用を心配するあまり、強いかゆみを我慢させてしまうことがあります。
しかし、強いかゆみが続けば、犬は眠れなくなったり、皮膚を掻き壊したり、感染症を繰り返したりします。

つまり、薬を使うことにもリスクがありますが、十分に治療しないことにもリスクがあります。

だからこそ、

「薬を使うか、使わないか」ではなく、「その子が快適に生活するために、どの治療をどの程度使うのがよいか」
を一緒に考えていくことが、犬のアトピー性皮膚炎の治療では大切です。

アポキルとゼンレリアにはそれぞれ特徴があります。

「どちらが良い薬か」ではなく、症状、年齢、これまでの治療歴、投薬のしやすさなどを考えながら、その子に合った治療方法を探していきましょう。

東京動物皮膚科センターでは、アトピー性皮膚炎をはじめ、長期間改善しないかゆみや皮膚炎についてもご相談を受けています。