こんにちは。東京動物皮膚科センターの馬場です。
JAK阻害薬シリーズ第4回は、新しく登場したJAK阻害薬「イルノシチニブ(商品名:ゼンレリア)」についてです。

オクラシチニブとの違い:阻害するJAKのプロフィール
イルノシチニブはJAK1とJAK2に対して同程度の阻害活性を示し、TYK2にはその約1/4、JAK3には約1/16の阻害活性を示します。
JAK1に選択性の高いオクラシチニブとは異なり、JAK1とJAK2をより幅広くカバーする薬です。
📌 オクラシチニブ vs イルノシチニブ(阻害JAKの比較)
- オクラシチニブ:JAK1に選択的。IL-31・IL-4・IL-13などを強力に抑制
- イルノシチニブ:JAK1・JAK2を幅広く阻害。より多くのサイトカイン経路をカバー
効果はオクラシチニブと同等
欧州で実施された268頭を対象とした多施設共同二重盲検プラセボ対照試験(0.6〜0.8mg/kg・1日1回・112日間)では以下の結果が得られました。
- PVASスコア(かゆみの指標)が持続的に改善し、56日目に「かゆみの臨床的寛解」に到達
- CADESIスコア(皮膚病変の重症度)も持続的に改善
- 寛解は112日目まで維持
- 犬アトピー性皮膚炎だけでなく、食物アレルギー・ノミアレルギーを含むアレルギー性皮膚炎全般に有効
ワクチン接種との両立が可能
ビーグル72頭を用いた試験では、通常量の1〜3倍のイルノシチニブを56日間投与しながらコアワクチン(ジステンパー・パルボウイルス・アデノウイルス・狂犬病)のブースター接種を行ったところ、すべての群で防御可能な抗体価が維持されました。
投薬中でも安心してワクチン接種ができます。
安全性・忍容性が高く、1日1回投与が便利
有害事象の発生率(嘔吐8.3%・下痢4.1%など)は対照薬群と同等で、全体的に忍容性の高い薬です。
また、最初から1日1回(SID)投与でよいため、オクラシチニブの最初の2週間が1日2回(BID)であるのと比べて、飼い主さんの投薬負担が少ない点も大きなメリットです。
本シリーズは2025〜2026年時点の文献をもとに作成しています。治療方針は必ず獣医師にご相談ください。
▶ 次回(最終回):JAK阻害薬まとめ〜正しく使うために知っておくこと〜
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