【歯科】犬の内歯瘻とは?歯茎や鼻から膿が出るときは要注意!

「最近、鼻から膿のようなものが出る」「片側の鼻だけがいつも汚れている」
そんなとき、実は原因が“歯”にあるかもしれません。

犬の内歯瘻(ないしろう)とは、重度の歯周病によって歯根(歯の根っこ)から鼻や頬の内側に膿が抜ける状態を指します。
放っておくと炎症が広がり、痛みや鼻炎を繰り返すこともあるため、早期発見・治療がとても大切です。

このコラムを参考に、お家のわんちゃんの歯や歯石のつき方をチェックしてあげてください!


内歯瘻の原因と見分け方

内歯瘻の多くは、歯周病の悪化が原因です。
歯の周りの骨が溶け、歯根に膿がたまり、やがて頬の粘膜へと破れて膿が出てきます。

犬の口腔写真


動物病院では歯科レントゲン検査で根本的な原因を確認します。

特に多いのが、上顎の犬歯(糸切り歯)や第4前臼歯に起きるケースです。
歯周病が原因で歯の根本の病変と鼻腔がつながってしまう口腔鼻腔瘻にも注意が必要です。
片側の鼻だけ汚れていたり、くしゃみをすると膿が飛ぶような症状があれば、内歯瘻・口腔鼻腔瘻を疑うサインです。


🩺症例紹介:9歳Mix犬・左上顎犬歯の内歯瘻

今回、当院に来院された9歳のMix犬は、数週間前から左側の鼻から膿が出るとのことで来院されました。
口の中を確認すると、左上顎の犬歯の根元に深い歯周ポケットがあり、歯肉の下に腫れが見られました。

犬の口腔写真。犬歯に内歯瘻を認める。

麻酔下で歯科X線を撮影したところ、歯根の周囲に骨吸収が広がり、鼻腔との交通が確認されました。
このため、感染源となっていた歯を抜歯し、さらに膿が抜けた通路を閉じるために**口腔粘膜フラップ手術(フラップ形成)**を実施しました。

手術後の犬の口腔写真。

術後は痛み止めと抗生剤を使用し、数日で鼻からの膿は完全に止まりました。
今では食欲も戻り、元気に過ごしています。


🧩治療と予防のポイント

内歯瘻の治療では、原因歯の除去感染経路の遮断が基本です。
抜歯後にそのまま放置すると再発することがあるため、
歯肉や頬の粘膜を丁寧に縫合して「膿の通り道」をふさぎます。

また、同じようなトラブルを防ぐためには、
歯石除去(スケーリング)や定期的な口腔チェックが欠かせません。
特に7歳を過ぎたら、年1回の歯科検診がおすすめです。


🐶まとめ:鼻水の陰に「歯の病気」が隠れていることも

内歯瘻は、見た目の症状が鼻や目の病気に似ているため、
「まさか歯が原因とは思わなかった」と驚かれる飼い主さんも多いです。

愛犬の鼻水や口臭、片側だけの涙・くしゃみなどが続くときは、
早めに動物病院で歯科検査を受けましょう。
早期に治療すれば、痛みも少なく、再発のリスクも減らすことができます。


東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では、
犬の歯周病や内歯瘻に対して歯科X線検査・外科治療を行っています。
「鼻から膿が出る」「片側だけ汚れる」などの症状が見られたら、お気軽にご相談ください。