【歯科】猫の下顎犬歯の歯周病 ― 痛みのサインに気づいていますか?

「最近、口の周りを気にしている」「ごはんを食べるスピードが落ちた」
そんな小さな変化が、歯周病のサインかもしれません。

特に猫では、上あごよりも下あごの犬歯(糸切り歯)にトラブルが起こることがあり、
重度になると歯根膿瘍(しこんのうよう)や歯のぐらつき・飛び出し(挺出)を起こすこともあります。


歯周病が進むとどうなるの?

口を開けている猫の写真

猫の歯周病は、歯の周りにたまったプラーク(細菌のかたまり)が原因で炎症が広がり、
やがて歯を支える骨(歯槽骨)が溶けていく病気
です。

初期では歯肉の赤みや口臭だけですが、
進行すると痛み・出血・膿・歯のぐらつきなどが見られるようになります。

特に下顎の犬歯は骨が薄いため、炎症が進むとすぐに膿がたまりやすく、
外側へ腫れたり、歯が浮き上がって見える(挺出)ケースもあります。


🩺症例紹介:8歳Mix猫・左下顎犬歯の歯根膿瘍

歯周病の猫の歯

今回の患者は、8歳のMix猫
数日前から左下あごが腫れており、口を開けるのを嫌がるとのことで来院されました。

診察では、左下顎犬歯の周囲に歯肉の腫れと出血、歯の動揺、歯根部の膿瘍形成が確認されました。
また、猫エイズ(FIV)陽性であることもわかり、免疫力が低いため炎症が治りにくく、感染が悪化しやすい状態でした。

麻酔下で歯科レントゲン検査を行うと、歯根の周囲に広範な骨吸収が見られたため、感染源となっていた犬歯を抜歯
歯槽骨の清掃と、感染部位を閉じるフラップ縫合を実施しました。


猫エイズ(FIV)陽性でも治療は可能

「猫エイズだから麻酔が心配…」という声をよく聞きます。
確かにFIV陽性の猫では、免疫力が落ちやすく、感染や回復に時間がかかることがあります。

しかし、感染源(病巣)を取り除かない限り、痛みや膿は改善しません。
今回のように、全身状態や血液検査を確認しながら適切に麻酔管理を行えば、
安全に抜歯や歯科処置を行うことができます。


日常でできる歯周病予防

猫の歯周病を防ぐには、

  • 定期的な歯科検診(年1回〜)
  • 歯石除去(スケーリング)
  • 無理のない範囲でのデンタルケア習慣

が、大切です。
特に中〜高齢の猫や、FIV/FeLV陽性の子では、痛みを隠す性格+免疫低下によって進行が気づかれにくいため、早めの受診が予防の鍵になります。


🐾まとめ:静かに進む歯周病、見逃さないで

猫の歯周病は、症状が出るころにはすでに進行していることが多い病気です。
口臭や食欲低下、片側だけのよだれや腫れなど、ほんの少しの違和感でも放っておかず、早めに動物病院でご相談ください。

早期発見・早期治療が、猫の“ごはんをおいしく食べる毎日”を守ります。


東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では、
猫の歯周病や歯根膿瘍に対して歯科X線検査・抜歯・縫合処置を行っています。
麻酔や猫エイズ(FIV)陽性の子の安全管理についてもご相談ください。

📞ご予約・お問い合わせ:03-3403-8012(歯科担当:森田)
📍東京都渋谷区神宮前