こんにちは。
東京動物皮膚科センター 歯科診療担当獣医師の森田です。
今回は、フレンチブルドッグの下顎切歯に生じた歯周病の症例をご紹介します。
この子は中程度の歯周病でしたが、叢生(そうせい)=歯並びの重なりが原因となっており、今後のケアのしやすさも考慮して抜歯という選択をしました。
術後2ヶ月の経過も含めて、歯周病と歯並びの関係について解説していきます。
🦷 フレンチブルドッグに多い「叢生」とは?
叢生(そうせい)とは、歯が重なり合って並んでいる状態です。
フレンチブルドッグやパグなどの短頭種(マズルが短い犬種)では、顎の大きさに対して歯の数が多い・スペースが足りないことが多く、叢生になりやすい傾向があります。
このような歯列不正は、以下のようなデメリットを招きます:
- 歯と歯の間に汚れが溜まりやすい
- 歯ブラシが届かない部分が多い
- 細菌やプラークが停滞し、歯肉炎・歯周病が進行しやすい
📋 症例紹介:左下顎第一切歯の中程度歯周病
今回のフレンチブルドッグの患者さんは、「前歯がグラグラしている」との主訴で来院されました。

診察の結果、**左下顎の第一切歯に中程度の歯周病(PDステージ2〜3相当)**が認められ、周囲には明らかな叢生が存在していました。
歯科用レントゲンでの確認でも歯槽骨の吸収が確認され、炎症が慢性化している状態でした。
✨ 抜歯を選択した理由
今回のケースでは、以下の理由から第一切歯の抜歯を選択しました:
- 歯の位置異常があり、今後も歯磨きが届きづらい
- 周囲の歯列に干渉しており、他の歯への影響も懸念される
- 飼い主様も今後のケアのしやすさを重視
抜歯は全身麻酔下で安全に行い、縫合を含めてスムーズに処置を完了しました。
また、抜歯窩には骨補填材(BoneTite)と自己由来成分(PRF)を併用して充填し、骨再生の促進と創傷治癒の最適化を図リマした、


📸 術後2ヶ月の経過写真
術後の2ヶ月検診では、抜歯部位の歯肉は良好に治癒しており、炎症の兆候はありませんでした。
また、歯列全体がスッキリと整い、ホームデンタルケアが格段にしやすくなったと飼い主様からも嬉しいお声をいただきました。

🪥 ホームケアしやすい口腔環境をつくることが予防の第一歩
歯を抜く=悪いこと、と思われがちですが、
「将来的に歯を守るために1本抜く」という考え方も大切です。
特にフレンチブルドッグなどの短頭種では:
- 歯が重なりやすい
- 唾液が多く口腔内が湿りやすい
- 折れやすい前歯を多く持っている
などの理由から、早めの診断と歯周病対策がとても重要です。
✅ まとめ
- フレンチブルドッグなどの短頭種は「叢生」による歯周病リスクが高い
- 歯の保存だけでなく、「ケアしやすい歯並び」も治療の視点に入れるべき
- 抜歯後の口腔ケアがしやすくなったことで、他の歯の健康も守れる結果に
🏥 東京動物皮膚科センターでは
当院では、歯の保存と生活の質(QOL)を両立する歯科治療を提供しています。
愛犬の口元で気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
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