老犬のくしゃみや鼻水、歯周病が原因かもしれません
「最近くしゃみが増えた」
「片側だけ黄色い鼻水が出る」
「抗生剤を飲むと一時的に良くなるけれど、また再発する」
このような症状は鼻炎だけでなく、重度歯周病による口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)が原因となっていることがあります。
今回は、16歳のトイプードルで認められた口腔鼻腔瘻の治療例をご紹介します。
症例紹介|16歳トイプードル
今回の患者さんは16歳のトイプードルです。
約1か月前から
- 黄色い鼻水
- くしゃみ
- 強い口臭
が続いていました。
高齢であることから麻酔処置は難しいと説明を受け、抗生剤による治療を続けていましたが、改善と再発を繰り返していたため当院を受診されました。
原因は歯周病による口腔鼻腔瘻

全身麻酔下で口腔内検査と歯科レントゲン検査を行ったところ、
- 左上顎犬歯
- 左上顎切歯〜犬歯
に口腔鼻腔瘻を認めました。
歯周病によって歯槽骨が失われ、口の中と鼻腔が交通していたことが鼻水やくしゃみの原因でした。
口腔鼻腔瘻とは?
口腔鼻腔瘻とは、歯周病の進行によって口腔と鼻腔がつながってしまう病気です。
特に小型犬の上顎犬歯周囲は鼻腔との距離が近く、歯周病が進行すると発症しやすいことが知られています。
この病気では
- 黄色い鼻水
- 慢性的なくしゃみ
- 鼻出血
- 食事中に鼻から水が出る
- 強い口臭
などの症状がみられます。
抗生剤で一時的に改善しても、感染源となる歯を治療しなければ再発することがほとんどです。
また歯周病は鼻だけでなく皮膚に膿を排出してしまう外歯瘻や、口の中に膿を排出してしまう内歯瘻を形成してしまうことがあります。
これらの病変は抗生物質で一時的に症状が治りますが、止めると再発することも特徴です。
外歯瘻について詳しく知りたい方はこちら
→「16歳でも歯科治療はできる?|顔の腫れを繰り返したポメラニアンの歯根膿瘍と麻酔管理」
治療内容
今回の症例では、
- 原因歯の抜歯
- 歯肉粘膜フラップ形成
- 口腔鼻腔瘻閉鎖術
を実施しました。
また、他の歯周病罹患歯についても同時に治療を行いました。
感染源を除去するとともに、鼻腔との交通をしっかり閉鎖することで再発防止を目指しました。

高齢犬でも麻酔はできる?
16歳という年齢だけを見ると、不安を感じる飼い主様は少なくありません。
しかし、「高齢だから麻酔できない」のではなく、「高齢だからこそ慎重な準備が必要」と当院では考えています。
術前には
- 心機能
- 呼吸機能
- 腎機能
- 肝機能
- 血圧
を評価し、麻酔中は
- 鎮痛薬
- 昇圧剤
- 酸素管理
- 輸液管理
を組み合わせ、循環と呼吸の安定化に努めています。
また、事前に治療計画を立てることで麻酔時間の短縮も図っています。
麻酔について詳しく知りたい方はこちら
→「歯科処置に必要な麻酔の種類」
高齢犬でも残したい歯があります
重度歯周病だからといって、すべての歯を抜歯するわけではありません。
犬歯や第一後臼歯などは食事や生活の質(QOL)に大きく関わる重要な歯です。
当院では
- 歯周病の進行度
- 歯の役割
- 再発リスク
- ご家庭でのデンタルケア
を総合的に評価し、抜歯する歯と残す歯を慎重に判断しています。
歯周病の治療について
→「歯を温存するために歯周組織再生治療を行なった症例」
まとめ|老犬のくしゃみや鼻水は歯周病のサインかもしれません
老犬のくしゃみや黄色い鼻水は、歯周病が原因となっていることがあります。
特に抗生剤で改善と再発を繰り返す場合には、口腔鼻腔瘻や根尖膿瘍など歯科疾患が隠れている可能性も考えられます。
高齢だからと治療を諦めるのではなく、全身状態をしっかり評価したうえで適切な麻酔管理と歯科治療を行うことで、症状の改善が期待できるケースも少なくありません。
鼻水やくしゃみが続く場合は、一度口腔内の検査を受けることをおすすめします。