「猫の歯が折れたけど元気そう」それでも放置は危険です
「猫の犬歯が欠けているけれど、元気だし様子を見てもいいかな?」

このようなご相談を、当院でもよく受けます。
しかし実際には、猫の歯が折れた状態は見た目以上に深刻なことがあります。
折れた歯の内部では、神経(歯髄)が露出していたり、細菌感染が進んでいたりすることがあり、猫が痛みを我慢しているケースも少なくありません。
猫は痛みを隠す動物です。
元気そうに見えても、歯を放置すると歯髄壊死や膿瘍、鼻炎症状へ進行することがあります。
このコラムでは、
「猫の歯が折れたときに何が起こるのか」
「どのような治療が選択されるのか」
をわかりやすく解説します。
🦷猫の犬歯破折とは?
猫の「犬歯(牙)」は口の前方にある長く鋭い歯で、
- 獲物(おもちゃ)を咬む
- 物を掴む
- 喧嘩や防御行動で相手を咬む
といった重要な役割を担っています。
この犬歯が欠ける・折れる状態を「破折(はせつ)」と呼びます。
🔍猫の歯が折れる主な原因
猫の歯は見た目以上に繊細で、日常の中で破折が起こることも珍しくありません。
よくある原因
- 高いところからの落下
- ケージやキャリーを噛む
- 他の猫とのケンカ
- 硬いプラスチックやおもちゃを噛む
猫の犬歯は、先端近くまで神経が通っているため、「少し欠けただけ」に見えても神経が露出(露髄)しているケースが多いのが特徴です。

⚠️見た目以上に危険な「歯髄露出」
犬歯の内部には、血管と神経からなる歯髄があります。
歯が折れて歯髄が露出すると、
- 強い痛み
- 細菌感染
- 歯の根の先に膿が溜まる(根尖膿瘍)
といった問題が起こります。
よく見られる症状
- 片側だけでごはんを噛む
- よだれが増える
- 顔や口を触られるのを嫌がる
- 鼻水・くしゃみ(歯根が鼻腔に近いため)
猫はこれらのサインを隠しやすく、「元気そうだから大丈夫」と思っているうちに慢性的な炎症や骨吸収が進行していることもあります。
🩺猫の破折歯の治療法
猫の歯が折れた場合、治療方法は折れ方・経過時間・年齢によって変わります。
まずは歯科用レントゲンで、
- 歯根の状態
- 神経の状態
- 感染や骨病変の有無
を詳しく確認します。
🦷主な治療の選択肢
① 生活歯髄切断(Vital Pulp Therapy)
- 折れてから数日以内
- 若い猫で神経がまだ生きている場合
神経の一部を保護し、歯を生かしたまま残す治療です。
② 抜髄根管治療(Root Canal Therapy)
- 神経が壊死している場合
- 感染が歯の内部に及んでいる場合
神経を取り除き、内部を消毒・封鎖します。
人の虫歯の治療と同じような「歯を残す治療」です。
③ 抜歯(Extraction)
- 重度感染
- 歯根破折
- 高齢猫で再発リスクが高い場合
無理に残さず、痛みや感染の原因を取り除くことを優先します。
※ いずれの治療も全身麻酔とレントゲン確認が不可欠です。
🐱症例紹介
今回治療を行なった子は9歳の猫ちゃんです。
慢性歯肉口内炎の治療と同時に破折した犬歯の治療を行いました。
破折時期は不明でしたが、歯科レントゲン上根元に病変はなく、歯髄を抜いて洗浄し歯を温存する抜髄根管治療を行いました。

🚨放置するとどうなる?
猫の折れた歯を放置すると、数週間〜数か月かけて次のような問題が起こります。
- 歯髄壊死 → 根尖膿瘍
- 鼻腔への炎症波及 → 慢性鼻炎
- 顎の骨吸収・変形
- 慢性的な痛み → 食欲低下・性格変化
特に上顎犬歯は鼻腔に近く、「鼻水が止まらない原因が実は折れた歯だった」というケースもあります。

🪥再発予防と日常ケア
再発防止のために、以下の点が大切です。
- 硬すぎるおもちゃを避ける
- 多頭飼育ではケンカによる外傷に注意
- 定期的な口腔チェック
- シニア猫では歯の脆弱化(吸収病巣)にも注意
以前に歯を折ったことがある猫では、他の歯ももろくなっていることが多く定期的な歯科検査が判断材料になる場合もあります。
🐾まとめ|猫の「歯が折れた」は緊急性のあるサイン
- 猫の歯・牙が折れた状態は見た目以上に深刻
- 放置すると歯髄炎・膿瘍・鼻炎につながる
- 早期なら歯を残せる治療が選択できることもある
- 折れたら早めにレントゲンで確認を
猫は痛みを隠す名人です。
「折れているけど元気そう」は危険信号。
早めの歯科チェックで、見えない痛みを取り除いてあげましょう。
🏥歯科・口腔疾患のご相談について
**東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院**では、猫の歯が折れた・欠けたといったトラブルについて状態に応じた検査や治療の選択肢をご説明しています。
「すぐ治療が必要なのか」
「歯を残せる可能性があるのか」
といった点も含め、飼い主様と一緒に考えていきます。