【歯科】犬の前歯が折れたら放置しても大丈夫?|残根を残すリスクと治療について

犬の前歯が折れている…そのままでも大丈夫?

前歯を出している犬の写真

「気づいたら犬の前歯が折れていた」
「痛がっていないから様子を見ても大丈夫?」
「歯がほとんどなくなっているから、もう抜けたのでは?」

犬の前歯(切歯)は小さな歯なので、折れても気づかれないことがあります。
しかし、見えている歯がなくなっていても、歯ぐきの中に歯根が残っている「残根」の状態になっていることがあります。

また、折れた歯から歯髄(神経)が露出している場合には、細菌感染が歯の内部へ進行する可能性があります。
「小さな前歯だから」と放置せず、一度状態を確認することが大切です。


犬の前歯が折れるとどうなる?

歯は大きく、

  • エナメル質
  • 象牙質
  • 歯髄
  • 歯根

からなります。
どの深さまで折れているかによって、治療方法は大きく変わります。

神経が露出していない場合

エナメル質や象牙質までの破折で、歯髄が露出していない状態です。
一見軽症に見えますが、象牙質には象牙細管という細かな管が存在します。
そのため、破折の状態によっては歯髄への刺激や細菌感染を防ぐための処置を検討します。

神経が露出している場合

歯の中央に赤色~黒色の点や穴が見える場合、歯髄が露出している可能性があります。
時間が経過すると、細菌感染 → 歯髄炎 → 歯髄壊死 → 根尖性歯周炎へ進行する可能性があります。
痛がっていないから治っている、というわけではありません。


「前歯がなくなった」と思っても残根していることがあります

ここは特に注意してほしいポイントです。
犬の前歯が歯ぐきの近くで折れると、外からは「歯が抜けた」ように見えることがあります。

しかし実際には、歯冠だけが折れて歯根が顎の骨の中に残っていることがあります。
これを残根と呼びます。

切歯が破折し残根した犬の下顎レントゲン写真

残根を放置するとどうなる?

残っている歯根がすべて問題を起こすとは限りませんが、特に感染した歯髄を伴う残根では注意が必要です。

歯根の内部から感染が進むと、

  • 根尖部の炎症
  • 歯槽骨の吸収
  • 根尖周囲病変
  • 歯肉の腫れ
  • 排膿や瘻孔
  • 痛み

などにつながることがあります。
そして、こうした異常は歯ぐきの上から見ただけでは分からないことがあります。


残根があるかどうかは歯科レントゲンで確認

「歯が抜けたのか」
「途中で折れて歯根が残っているのか」

を判断するために重要なのが歯科レントゲン検査です。
歯科レントゲンでは、

  • 歯根が残っていないか
  • 歯根の周囲に骨吸収がないか
  • 根尖部に異常がないか
  • 隣接する歯や骨への影響

などを確認します。
特に「昔、前歯が折れたけれど、そのままになっている」という犬では、歯科処置で全身麻酔を行う機会に確認しておくことをおすすめします。


折れた前歯は抜歯?それとも残せる?

すべての折れた歯を抜歯するわけではありません。
破折した位置や歯髄の状態、受傷からの時間、歯周組織の状態などを評価して治療方法を決定します。

状態によっては、

  • 歯冠修復
  • 歯内療法
  • 抜歯

などが選択肢になります。
一方、すでに歯冠が失われ、感染した歯根だけが残っている場合には、残根の抜歯が必要になることがあります。

切歯の破折に対する残根の抜歯

小さな前歯でも放置しないことが大切

切歯は犬歯や奥歯と比べると小さいため、
「なくなっても問題ない」と思われがちです。
しかし重要なのは歯の大きさではなく、感染や痛みが残っていないかどうかです。
特に、

  • 前歯が途中から折れている
  • 歯が急になくなった
  • 歯ぐきに小さな穴がある
  • 歯ぐきが腫れている
  • 出血や膿がある
  • 口を気にする
  • 口臭が強くなった

といった変化があれば、一度歯科検査を受けることをおすすめします。


まとめ|犬の前歯が折れたら歯根まで確認を

犬の前歯が折れても、見た目だけではどこまで破折しているのか分からないことがあります。
特に注意したいのが、「抜けたように見えて、実は歯根が残っている」残根です。
感染した残根を放置すると、歯ぐきの下で炎症や骨吸収が進行する可能性があります。

犬の前歯が折れたことに気づいたら、痛がっていなくても早めに動物病院で相談し、必要に応じて歯科レントゲン検査を受けましょう。
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では、歯科レントゲンを用いて破折した歯や残根の状態を確認し、歯を残せるか、抜歯が必要かを判断しています。

「前歯が折れている」「いつの間にか歯がなくなっている」「残根していないか心配」という場合もご相談ください。