「歯石がついてきたかな?」
「前歯のあたりが少しグラグラしてる気がする」
そんな何気ない気づきが、歯周病の始まりかもしれません。
特にトイプードルやチワワなどの小型犬では、前歯(切歯)の歯周病がとても多く見られます。
見た目では小さな歯でも、実は大切な“噛む・支える”役割を持っており、放置すると周囲の骨まで溶かしてしまうこともあります。
このコラムで小型犬の歯周病について理解を深め、歯科検診を受診しましょう!
過去のコラムはこちら→「小型犬に多い「切歯(前歯)の歯周病」|抜歯と再生療法(PRF・人工骨)での治療例」
🐶なぜ小型犬は前歯の歯周病になりやすいの?

小型犬は歯の大きさに対して顎が小さいため、歯がきれいに並びきらずに**重なって生える(叢生/そうせい)**ことが多いです。
この「歯の重なり」がプラーク(歯垢)や歯石をためやすくし、
ブラッシングが難しい前歯では、知らないうちに歯周病が進行してしまうことがあります。
また、切歯は咬合圧(噛む力)を分散させる役割があるため、1本でも失うと
噛み合わせが崩れたり、他の歯に負担がかかることもあります。
🩺症例紹介:2歳トイプードル|右下顎第三切歯の抜歯と再生療法
今回の症例は、9歳のトイプードル。
「歯石が気になる」とのことで来院されました。

診察の結果、
- 切歯の密集(叢生)
- 下顎犬歯と切歯の間に歯石沈着
- レントゲンで右下顎第三切歯に骨融解(骨吸収)を確認
といった所見が認められました。
全身麻酔下で歯石除去(スケーリング)を行ったところ、歯根部の骨吸収が明らかで、感染源となっていた右下顎第三切歯を抜歯。
抜歯後の空洞(抜歯窩)は隣の犬歯に近かったため、PRF(自己血液由来の再生膜)と人工骨を用いて歯槽骨の再生をサポートしました。
⚖️「残すべき歯」と「抜くべき歯」の見極め

歯を残すことはもちろん理想的です。
しかし、感染が強い歯を無理に残すと、
周囲の骨や隣の歯まで炎症が広がる危険があります。
次のような場合は、抜歯を検討するタイミングです。
- 歯槽骨の吸収が著しい
- 歯の動揺(グラつき)が強い
- 根尖膿瘍(歯の根の膿)や瘻孔(ろうこう)がある
- 機能歯(犬歯や大臼歯)に骨融解が波及している
- 痛みで食欲や生活の質が落ちている
当院では、歯を残す治療(保存療法)と抜歯のメリットを比較しながら、
飼い主様と一緒に最善の選択をしていきます。
🌱再生療法(PRF・人工骨)の役割


抜歯を行った後、空いた部分をそのままにすると、骨が痩せて歯列全体が不安定になることがあります。
そこで当院では、PRF(Platelet-Rich Fibrin)や人工骨を用いた再生療法を行い、
抜歯部位の骨や歯肉の回復を促しています。
PRFは、動物自身の血液から作られる“自然な再生膜”で、
感染のリスクを抑えながら治癒を早める効果があります。
🐾まとめ|小さな前歯でも、見逃せないサイン
- 小型犬は顎が小さく、前歯の歯周病が起こりやすい
- 見た目がきれいでも、レントゲンで骨吸収が進んでいることがある
- 早めの抜歯と再生療法で、周囲の歯を守り、噛む力を維持できる
「前歯がグラグラする」「歯ぐきが腫れている」「口臭が強い」
そんなサインが見られたら、早めに歯科検診を受けましょう。
早期発見と適切な処置が、愛犬の“お口の健康寿命”を守ります。
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では、
小型犬に多い切歯の歯周病に対し、歯科用レントゲンによる診断と再生療法を行っています。
「歯をできるだけ残したい」「痛みを取り除きたい」という方はお気軽にご相談ください。
📞ご予約・お問い合わせ:03-3403-8012(歯科担当:森田)
📍東京都渋谷区神宮前