【歯科】抜歯が必要な歯・温存できる歯の違いとは

歯周病の治療では、すべての歯を抜くわけではありません。
「抜く歯」と「残す歯」を正しく見極めることで、噛む力を保ちながら口腔内の健康を守ることができます。
今回は、8歳のトイプードルで実際に行った治療をもとに、抜歯の判断基準と機能歯の温存についてご紹介します。


症例紹介:8歳トイプードルの歯周病治療

歯石が多く付着した犬の歯の写真。歯周病が進行し歯肉が腫れている状態。

来院したのは、8歳のトイプードルでした。
上顎の第二前臼歯・第三前臼歯・第四前臼歯に歯周病を認め、小臼歯には歯肉の炎症と軽度の動揺が確認されました。
口腔内全体を確認したところ、第四前臼歯は咬合(噛み合わせ)に関与しており、左右のバランス維持に重要な機能歯でした。

そのため、第二・第三前臼歯のみを抜歯し、第四前臼歯は温存して治療を行いました。

歯周病治療を行なった犬の歯の写真。歯石が除去され綺麗になっている。

抜歯の判断基準

抜歯の判断では、単に「歯周病があるから抜く」という決め方はしません。
以下のポイントを基準に、保存か抜歯かを慎重に見極めます。

  • 動揺度:歯のぐらつきが大きく、周囲骨が失われている歯は抜歯する
  • 歯周ポケットの深さ:6mm以上で、根尖(歯の根)近くまで病変が及ぶ場合は抜歯する
  • 機能性:咬合に関与しない非機能歯は抜歯の優先度が高い
  • 痛みの有無:痛みや膿がある歯は感染源として除去する
  • 全身状態:麻酔下での負担を考慮し、必要最小限の処置を行う

これらを総合的に評価し、今回は第二・第三前臼歯の抜歯を選択しました。


温存した歯のケアと管理

温存した第四前臼歯は、今後も噛む機能を維持するために定期的な検査とクリーニングが欠かせません。
歯周病は再発しやすいため、以下のケアを継続して行うことが重要です。

  • ブラッシングを1日1回行う
  • デンタルガムやデンタルペーストを活用する
  • 3〜6か月ごとに動物病院で口腔検診を受ける

これらの習慣により、残した歯を長く健康に保つことができます。


まとめ

歯周病治療では、「抜く」か「残す」かの判断がとても重要です。
機能を保てる歯を可能な限り温存し、生活の質(QOL)を守ることが治療の目的です。
「どの歯を残すべきか」「抜歯が必要なのか」迷う場合は、ぜひ一度ご相談ください。

当院では、歯科レントゲンを用いた診断と、麻酔認定医によるできる限り痛みを抑えた歯科治療を行っています。
愛犬の口臭や歯のぐらつきが気になる方は、お気軽にご相談ください。

📞ご予約・お問い合わせ:03-3403-8012(歯科担当:森田)
📍東京都渋谷区神宮前