【歯科】犬の埋伏歯(まいふくし)を除去した症例|原因・治療法・注意点

こんにちは。
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院で歯科診療を担当している獣医師の森田です。

今回は、「埋伏歯(まいふくし)」と呼ばれる、歯が正常に萌出せず顎の中に埋まったままになっている状態について、実際の症例とともに解説します。


🦷 埋伏歯(まいふくし)とは?

埋伏歯とは、本来萌出すべき永久歯が、歯肉や骨の中に埋まったままになっている状態を指します。
ヒトの親知らずと似た病態ですが、犬では切歯や前臼歯、小臼歯に見られることが多く、**腫瘤形成や嚢胞化(うみ・ふくらみ)**の原因になることもあります。


🩺【症例紹介】12歳ミニチュアシュナウザーの埋伏歯除去手術

今回ご紹介するのは、12歳のミニチュア・シュナウザーの症例です。

▶ 主訴

歯石除去目的での来院時、歯科用レントゲン検査にて異常を発見。

▶ 検査所見

両側の下顎第一前臼歯(P1)が埋伏しており、歯冠が骨内に完全に埋まっている
・直上に萌出している第二小臼歯に歯周病・歯冠吸収の兆候
あり
左下顎第一前臼歯の周囲に病的嚢胞形成や骨吸収が認められ、今後の歯原性嚢胞のリスク回避のため外科的除去を選択


🛠 埋伏歯除去の外科処置

処置は全身麻酔下で行いました。

  1. 埋伏歯の直上にある小臼歯を抜歯
  2. 歯肉を切開し、歯槽骨を一部削合
  3. 埋伏していたP1を慎重に摘出
  4. 周囲の骨縁を整え、歯肉を縫合して閉創

術後は腫れも少なく、抗生物質と鎮痛薬を併用しながら1週間で順調に治癒しました。


⚠️ 放置された埋伏歯のリスク

犬の埋伏歯を放置すると、以下のような問題が起こることがあります。

  • **含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)**の形成
  • 周囲骨の吸収や変形
  • 顎骨折のリスク増加
  • 隣接歯の歯根吸収
  • 口腔内腫瘤の誤診リスク

特に、埋伏歯の**周囲に腫瘍性変化(アミロブラストーマなど)**が起こる可能性も指摘されています。


✅ まとめ

埋伏歯は見た目ではわからないことが多く、歯科用レントゲン(X線)検査が診断のカギになります。
高齢の子でも、歯石除去と合わせてスクリーニングを行うことで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。


🏥 東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では

  • 犬猫の歯科レントゲン検査(全顎)
  • 専門的な歯科処置(抜歯、根管治療、口腔外科など)
  • 高齢動物への安全な麻酔管理

を実施しています。

💡「歯が足りない?」「口の中にしこりがある」など、気になる症状がある場合は、まずはご相談ください。

📞 ご予約・お問い合わせ:03-3403-8012(歯科診療担当:森田)