こんにちは。東京動物皮膚科センター 歯科診療担当獣医師の森田です。
今回は、**犬に多い第四前臼歯の破折(はせつ)**と、その治療方法について実際の症例をもとに解説します。
「歯が欠けてしまった」「犬の歯が折れているかも」と感じたら、できるだけ早く動物病院で診察を受けましょう。
犬の歯が折れるとどうなる?|露髄と根尖病変のリスク
犬の歯も人間と同様に、内部には神経や血管(歯髄)が通っています。
そのため、歯が折れて歯髄が露出した状態(露髄=ろずい)になると、細菌が内部に侵入し、以下のようなリスクが生じます:
- 歯髄炎(神経の炎症)
- 歯髄壊死(神経の死)
- 根尖性歯周炎(歯の根元の炎症)
また、露髄がなくても象牙質が露出している場合には、知覚過敏や感染の温床となる可能性もあるため、注意が必要です。
犬の破折歯|露髄している歯の治療選択肢
露髄が確認された場合の治療方法は主に以下の2つです:
| 治療法 | 概要 | 適応条件 |
|---|---|---|
| 生活歯髄切断(Vital pulpotomy) | 神経を温存する治療 | ・露髄から1〜2日以内 ・根尖病変がない ・出血が5分以内に止まる |
| 根管治療(抜髄・根管充填) | 神経を抜き、詰め物で密封 | ・神経が感染している ・出血が長引く ・時間が経っている場合 |
【症例】第四前臼歯の破折に対して根管治療を実施
今回のわんちゃんは、露髄後に時間が経過しており、神経の温存が難しい状態でした。
そのため、**感染した歯髄を除去する「根管治療(こんかんちりょう)」**を選択しました。

根管治療の流れ:
- ラバーダム(防湿装置)の設置
- 歯の中にアクセスを作成
- 歯髄の除去
- 根管内の洗浄・消毒
- 根管充填(薬剤やセメントで封鎖)
- 歯冠の再建(コンポジットレジンなど)
なお、犬の**第四前臼歯は「三根歯」**と呼ばれる3つの根をもつ歯で、それぞれに対して丁寧な処置が必要です。


破折を防ぐには?|早期発見がカギ
この子のように、硬いおもちゃや角ばったものを日常的に噛んでいる犬では、第四前臼歯の破折が非常に多く見られます。
📌 破折に気づくチェックポイント:
- 歯の一部が欠けている
- 歯が茶色や黒く見える
- 食欲はあるが噛み方が変わった
- よだれや口臭が増えた
放置すると、感染が進行し歯根や顎の骨まで影響する恐れがあります。歯が折れていることに気づいたら、できるだけ早く動物病院へ。
🏥 東京動物皮膚科センターの歯科診療について
東京動物皮膚科センターでは、犬の破折歯や露髄に対する根管治療や抜歯、口腔外科まで幅広く対応しています。
麻酔管理も含め、安全かつ正確な歯科治療を行っております。
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東京動物皮膚科センター(歯科診療担当:森田)
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