【歯科】猫の尾側口内炎と全臼歯抜歯の症例|痛みから解放する治療選択

こんにちは。
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院 歯科診療担当獣医師の森田です。

今回は、猫に多い痛みを伴う口腔疾患「尾側口内炎(びそくこうないえん)」と、その治療として選択されることの多い全臼歯抜歯について、実際の症例を交えて解説します。


🐱 猫の歯肉炎と尾側口内炎の違い

猫の口腔内炎症にはいくつか種類がありますが、歯肉炎と**口内炎(特に尾側口内炎)**は大きく異なります。

項目歯肉炎尾側口内炎
主な原因歯石・歯垢免疫反応・ウイルスなど
症状の部位歯の周囲(特に頬側)舌・口蓋・咽頭部を含む後方粘膜
痛み・症状軽度で気づきにくい強い痛み・よだれ・食欲低下
進行性ゆるやか急激・慢性化しやすい

尾側口内炎では、食事中に突然鳴く、攻撃的になる、触られるのを嫌がるなど、強い痛みの行動サインが見られることが多いです。


💊 内科治療とその限界

抗生剤やステロイド、消炎鎮痛剤によって一時的な症状緩和が得られることもありますが、多くの症例では効果が持続せず、再発や薬剤耐性、長期使用による副作用が問題になります。

また、ステロイドを長期間使用している猫では、将来の抜歯手術後も炎症がなかなか改善しないという研究報告もあります。


🦷 根本治療は「抜歯」

尾側口内炎は、「歯が存在すること」が免疫系の異常反応を引き起こす原因の一つと考えられており、根本治療として抜歯が推奨されます。

抜歯によって:

  • 刺激源の除去
  • 口腔内細菌環境の改善
  • 炎症の沈静化

が期待できます。

抜歯の種類抜歯部位成功率(報告より)
全臼歯抜歯臼歯(奥歯)すべてを抜く約60〜70%で改善・減薬可能
全顎抜歯全ての歯を抜く約60〜95%で改善・減薬可能

🐾 症例紹介:全臼歯抜歯を行った猫ちゃん

今回の症例は、口内痛・よだれ・食欲低下といった典型的な症状を示していた猫ちゃんです。
診断の結果、**尾側口内炎と判断し、全臼歯抜歯(前歯と犬歯は温存)**を選択しました。

術後の経過は良好で、食欲や元気も戻り、内科的治療の頻度も大きく減らすことができました。


✅ まとめ

  • 猫の尾側口内炎は、強い痛みと慢性炎症を伴う難治性疾患
  • 内科治療が効かない・再発を繰り返す場合は、抜歯による根本治療が有効
  • 飼い主様と相談の上、症状と生活の質を踏まえた治療選択が大切です

🏥 東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では

当院では、猫の歯科・口腔疾患に特化した診療と麻酔管理、外科対応を行っています。
「口を触られるのを嫌がる」「口臭やよだれが増えた」など、少しでも気になるサインがあれば、お早めにご相談ください。

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