【歯科】重度歯周病で抜歯処置と口腔外科手術を行なった症例12

こんにちは。
東京動物皮膚科センター 歯科診療担当獣医師の森田です。

本コラムでは、犬や猫における進行した歯周病と、それに伴う外科的対応について、症例を交えて解説します。

とくに、歯周病を放置することで生じうる**口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう/oronasal fistula)**と呼ばれる合併症についても取り上げています。
ご自宅のワンちゃん・ネコちゃんの口腔ケアを考えるうえでの参考になれば幸いです。

※本記事には出血や膿の画像が含まれます。閲覧にご注意ください。


犬猫の歯周病が進行したケース

以下は、「歯がぐらつく」という主訴で来院した症例です。

検査の結果、歯科用レントゲンにて歯槽骨の著しい吸収像(融解)が認められました。
診断は重度歯周病(Stage 4)
抜歯処置を実施しました。

また、両上顎の犬歯及び第三切歯には鼻腔につながる瘻管(口腔鼻腔瘻)を形成しており、抜歯後にデブリスの除去や歯肉縫合などの外科手術も必要でした。


歯周病が原因で起こる「口腔鼻腔瘻(Oronasal Fistula)」とは?

**口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)は、口腔内と鼻腔をつなぐ異常な交通路(瘻孔)**が形成される疾患です。

発症原因:

  • 重度の歯周病による歯槽骨の吸収・破壊
  • 外傷や感染症
  • 抜歯後の創傷治癒不全 など

特に、上顎犬歯(牙)や臼歯に多くみられます。

主な症状:

  • 慢性的なくしゃみ、鼻汁、鼻血
  • 鼻腔からの悪臭
  • 食事中の逆流(フードが鼻に回る)
  • 顔を触られるのを嫌がる、口の痛み

診断と治療:

  • 歯科用レントゲンやCT検査による評価
  • 瘻孔を外科的に縫合・閉鎖する手術が必要となります
  • 症状が進行している場合は複数回の再建手術が必要になることもあります

予防と早期発見が重要です

今回の症例では、鼻からの逆流や鼻血、悪臭といった典型的な症状は出ておらず適切な処置を実施することができました。

口腔鼻腔瘻は、早期発見・早期処置によって防ぐことが可能な病態です。


お口のトラブルが気になるときは、まず歯科診療へ

  • 歯がグラグラしている
  • 口臭が強くなってきた
  • 鼻水やくしゃみが続く
  • ごはんの食べ方に違和感がある

これらは歯周病の進行や合併症のサインかもしれません。
また、「麻酔が心配で治療を迷っている」というご相談も少なくありませんが、当院では事前の全身状態評価を徹底したうえで、可能な限りリスクを抑えた麻酔管理を行っています。


ご相談・ご予約はこちら

東京動物皮膚科センターでは、犬猫の歯周病および口腔外科対応に力を入れています。
東京都渋谷区・港区でペットのお口の悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。

 予約・お問い合わせ:03-3403-8012(歯科診療 担当:森田)