犬の口の中にしこりを見つけたら、まず原因を調べることが大切です
「歯ぐきにできものがある」
「口の中にしこりができている」
「少しずつ大きくなってきた」
などのお悩みはありませんか?
犬の口腔内腫瘤には、
- 炎症による腫れ
- 良性腫瘍
- 悪性腫瘍
などさまざまな病気が含まれます。
見た目だけで良性・悪性を判断することはできないため、早めの精密検査と病理検査が重要です。
今回は、右下顎第一前臼歯(奥歯)にできたしこりを主訴に来院された7歳のラブラドール・レトリーバーをご紹介します。
症例紹介|7歳 ラブラドール・レトリーバー

飼い主様は、「右下の歯ぐきにしこりができている」ことに気付き、かかりつけ病院を受診されました。
CT検査では歯肉由来の腫瘍が疑われ、外科治療をご希望され当院をご紹介いただきました。
全身麻酔下で精密検査と外科切除を実施
口腔内腫瘤では、
- 歯科レントゲン
- CT
- 切除生検
などを行い、歯との位置関係や顎骨への浸潤、そして腫瘍の由来確認することが重要です。
今回の症例では、腫瘍が右下顎第一後臼歯(409)から発生していたため、
- 第四前臼歯
- 第一後臼歯
- 第二後臼歯
を含めた部分顎骨切除を実施しました。
十分な安全域(マージン)を確保しながら切除し、摘出した組織は病理検査へ提出しました。
棘細胞性エナメル上皮腫とは?
病理検査では**棘細胞性エナメル上皮腫(Acanthomatous Ameloblastoma)**と診断されました。
この腫瘍は犬で比較的よくみられる歯原性腫瘍の一つです。
特徴
- 遠隔転移はほとんどない
- 局所浸潤性が非常に強い
- 顎骨を溶かしながら増殖する
そのため、「良性だから様子を見る」という病気ではありません。
十分な範囲で切除しなければ再発する可能性があります。
治療は「しっかり切除すること」が重要
棘細胞性エナメル上皮腫では、
- 腫瘍だけを削る
- 表面だけ切除する
といった治療では再発する可能性があります。
そのため今回も、
- 腫瘍
- 発生歯
- 周囲の顎骨
を含めて切除しました。
切除後は歯肉粘膜フラップで創部を閉鎖し、食事や生活への影響をできるだけ少なくするよう配慮しています。
病理検査で「取り切れていること」を確認
摘出した組織は病理検査を行い、切除断端(マージン)に腫瘍細胞は認められず、完全切除と診断されました。
外科治療では「腫瘍を取ること」だけではなく、本当に取り切れたかどうかを病理検査で確認することも非常に重要です。
術後経過

術後の経過は良好で、
- 食欲良好
- 創部の治癒も順調
- 再出血や感染なし
となっています。
現在も定期的に経過観察を続けています。
犬の口の中のしこりを見つけたら
犬の口腔内腫瘤では、
- 良性腫瘍
- 悪性腫瘍
- 炎症性病変
が混在しています。そのため、
- 早めの受診
- 歯科レントゲン
- 必要に応じてCT
- 病理検査
による診断が重要です。
早期に診断できれば、より負担の少ない治療につながることもあります。
まとめ
- 犬の口の中のしこりは見た目だけでは診断できない
- 棘細胞性エナメル上皮腫は局所浸潤性の強い歯原性腫瘍
- 治療は十分なマージンを確保した外科切除が基本
- 病理検査で完全切除を確認することが重要
- 術後も定期的な経過観察を続けることが大切
口の中のしこりに気付いた場合は、「様子を見る」のではなく、早めにご相談ください。