【皮膚】なぜ外耳炎は何度も繰り返すの?~外耳炎②

~PSPP分類から考える、本当の原因~

こんにちは。東京動物皮膚科センターの馬場です。

前回は、外耳炎とはどのような病気なのかについてお話ししました。

「耳をかいている」「耳が臭う」「頭をよく振る」といった症状がみられたら、できるだけ早く治療を始めることが大切でした。

今回は、多くの飼い主さんからご相談いただく、

「どうして外耳炎は何度も繰り返すのでしょうか?」という疑問について解説します。

「薬を使えば一度は良くなるけれど、しばらくするとまた悪くなる。」

このような経験をされた方は少なくありません。
実は、外耳炎は単純な細菌感染ではなく、さまざまな要因が重なって起こる病気だからです。


外耳炎は「炎症」と「感染」が混ざった病気です

外耳炎というと、「細菌が悪さをしている病気」というイメージを持たれることがあります。

確かに外耳炎では細菌やマラセチア(酵母)が増えていることが多く、抗菌薬や抗真菌薬が必要になることも少なくありません。

しかし、多くの場合、それらは最初の原因ではありません。

例えば、アレルギーによって耳に炎症が起こると、耳の中は湿度が高くなり、耳垢も増えます。すると、本来は少数しか存在しない細菌やマラセチアが増殖し、さらに炎症が悪化してしまいます。

つまり、

「耳が炎症を起こした結果として、細菌やマラセチアが増えてくる」

という流れが、多くの外耳炎で起こっています。

そのため、細菌だけを減らしても、炎症を起こした原因が残っていれば再発を繰り返してしまいます。


外耳炎を理解するための「PSPP分類」

獣医皮膚科では、外耳炎を考える際にPSPP分類という考え方を用います。

これは外耳炎を

  • Primary causes(主因)
  • Secondary causes(副因)
  • Predisposing factors(素因)
  • Perpetuating factors(持続因子)

の4つに分けて整理する方法です。

少し難しそうに聞こえますが、

「なぜ外耳炎になったのか」
「なぜ治らないのか」

を考えるための、とても分かりやすい考え方です。


Primary causes(主因)

外耳炎を最初に引き起こした原因

主因とは、

それだけで正常な耳に外耳炎を起こすことができる病気です。

代表的なものとして

  • アトピー性皮膚炎
  • 食物有害反応
  • 耳ダニ
  • 異物(ノギなど)
  • 角化異常
  • 一部の内分泌疾患

などがあります。

犬の外耳炎では、最も多い主因はアレルギーといわれています。つまり、耳に細菌が増えたから外耳炎になったのではなく、アレルギーによって耳が炎症を起こした結果、細菌が増えたというケースが非常に多いのです。


Secondary causes(副因)

炎症を悪化させる二次感染

副因とは、

炎症を起こした耳で増殖し、症状を悪化させるものです。

代表的なのは

  • ブドウ球菌などの細菌
  • マラセチア

です。

健康な耳にもこれらの微生物は存在しています。

しかし、炎症によって耳の環境が変化すると急激に増殖し、

  • 耳垢が増える
  • 臭いが強くなる
  • 痒みや痛みが悪化する

といった症状を引き起こします。

だからこそ、抗菌薬や抗真菌薬は重要です。

ただし、それだけでは「一時的によくなるだけ」で終わってしまうことがあります。


Predisposing factors(素因)

外耳炎になりやすくする条件

素因とは、

外耳炎が起こりやすくなる体質や環境です。

例えば、

  • 垂れ耳
  • 耳道内の毛が多い犬
  • 耳道が狭い犬種
  • 夏場の高温多湿
  • 水遊びやシャンプー後の湿気

などがあります。

よく、「垂れ耳だから外耳炎になるんですね。」と言われますが、それだけでは外耳炎にはなりません。

あくまで「外耳炎を起こしやすくする条件」の一つです。


Perpetuating factors(持続因子)

外耳炎を治りにくくする変化

持続因子とは、

一度始まった外耳炎を慢性化させる変化です。

炎症が長期間続くことで、

  • 耳道の皮膚が厚くなる
  • 耳垢腺が増える
  • 耳道が狭くなる
  • 軟骨が石灰化する

といった変化が起こります。

このような状態では点耳薬が耳の奥まで届きにくくなり、さらに炎症が続くという悪循環に陥ります。

慢性外耳炎が治りにくいのは、この持続因子が大きく関係しているためです。


外耳炎を治すために本当に大切なこと

PSPP分類から分かるように、外耳炎は一つの原因だけで起こる病気ではありません。

細菌やマラセチアを減らすことは大切ですが、それだけでは十分ではありません。

私たちが診察で考えているのは、

  • なぜ外耳炎になったのか(主因)
  • 何が症状を悪化させているのか(副因)
  • なぜこの子は外耳炎になりやすいのか(素因)
  • なぜ治りにくくなっているのか(持続因子)

という4つの視点です。

これらを一つひとつ整理しながら治療することで、再発を繰り返さない外耳炎治療につながります。


当院では

東京動物皮膚科センターでは、耳垢検査だけでなく、耳鏡検査やビデオオトスコープ検査、皮膚の状態やアレルギーの評価も含めて、「なぜ外耳炎になったのか」を総合的に診断しています。

「外耳炎を何度も繰り返す」「薬をやめるとすぐ悪くなる」といった症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

次回は、「外耳炎は時間との勝負~慢性化すると耳は元に戻らない?~」についてお話しします。