【歯科】犬の鼻水・くしゃみが続く原因は歯周病?|老犬に多い口腔鼻腔瘻の治療例

老犬の「くしゃみ」「鼻水」は歯周病が原因のことがあります

「最近くしゃみをするようになった」
「片方の鼻から鼻水が出る」
「鼻炎だと思って薬を飲んでいるけれど治らない」

このような症状は、高齢犬の歯周病が原因になっていることがあります。
歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶け、口の中と鼻の中がつながる**口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)**という状態になることがあります。
今回は、重度歯周病によって口腔鼻腔瘻を発症した10歳のトイプードルをご紹介します。


症例紹介|10歳トイプードル

犬の口腔写真。犬歯に分厚い歯石が沈着している。

今回来院したのは10歳のトイプードルです。
飼い主様は

  • 口臭が強くなった
  • 食事中にくしゃみをすることがある

ことを心配され受診されました。
口腔内を確認すると、重度の歯石沈着と歯周病を認めました。
さらに全身麻酔下で歯科レントゲン検査を行ったところ、上顎犬歯周囲の歯槽骨が大きく吸収され、鼻腔との交通(口腔鼻腔瘻)が確認されました。

一見すると歯ぐきの退縮は目立たず、「そこまで悪く見えない歯周病」でしたが、歯ぐきの中では重度の骨吸収が進行していた症例でした。


口腔鼻腔瘻とは?

口腔鼻腔瘻とは、歯周病や外傷などによって口の中と鼻の中が交通してしまう病気です。
特に小型犬では、上顎犬歯の歯根が鼻腔に非常に近いため、歯周病が進行すると発症しやすくなります。

犬の歯科レントゲン。歯槽骨に穴が空いている。

主な症状

  • くしゃみ
  • 鼻水(黄色い鼻汁)
  • 鼻出血
  • 食事中に鼻から水やフードが出る
  • 慢性的な鼻炎
  • 強い口臭

「鼻の病気」だと思って受診した結果、歯周病が原因だったというケースは少なくありません。


治療|抜歯と粘膜フラップによる閉鎖術

歯肉粘膜フラップにより抜歯した部位を閉鎖している。

今回の症例では、

  • 感染源となった歯の抜歯
  • 口腔鼻腔瘻の閉鎖
  • 粘膜フラップ形成術(トライアンギュラーフラップ)

を実施しました。
瘻孔を確実に閉鎖するためには、周囲の歯肉を十分に剥離し、緊張の少ない状態で縫合することが重要です。
術後は順調に回復し、

  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 口臭

はいずれも改善しました。


歯周病を放置すると起こる合併症

歯周病は単なる口臭の病気ではありません。
進行すると、

  • 歯の動揺・脱落
  • 根尖膿瘍
  • 顎骨骨折(小型犬)
  • 口腔鼻腔瘻
  • 慢性的な鼻炎

などの原因になります。
特に高齢犬では、「年齢のせい」と思われていた症状の背景に歯周病が隠れていることもあります。


高齢犬でも歯科治療はできる?

「高齢だから麻酔はできないのでは?」というご相談は非常に多くいただきます。
確かに高齢犬では、

  • 心臓病
  • 呼吸器疾患
  • 腎疾患
  • 肝疾患

などを併発していることも多く、若い犬と同じ麻酔管理ではありません。
そのため当院では、

  • 血液検査
  • 胸部レントゲン
  • 超音波検査

を術前に十分行い、代謝・循環・呼吸状態の評価を行います。
さらに麻酔中は、

  • 血圧管理
  • 酸素化
  • 鎮痛管理
  • 昇圧剤の使用
  • 麻酔時間の短縮

を意識しながら処置を行っています。「高齢だから麻酔ができない」のではなく、「高齢だからこそ十分な準備をして麻酔に臨むこと」が重要です。


まとめ|老犬のくしゃみや鼻水は歯周病のサインかもしれません

  • 老犬のくしゃみや鼻水は歯周病が原因のことがある
  • 口腔鼻腔瘻では抜歯と粘膜フラップによる閉鎖術が必要になる
  • 歯周病は見た目以上に進行していることも少なくない
  • 高齢犬でも全身状態を評価し、適切な麻酔管理を行うことで治療できるケースは多い

「鼻炎がなかなか治らない」
「老犬だから仕方ない」

と考えている症状の中に、歯周病が隠れていることがあります。
くしゃみや鼻水、口臭が続く場合は、一度口腔内の検査を受けることをおすすめします。


🏥 東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院

当院では、

  • 歯科レントゲンによる精密診断
  • 重度歯周病治療
  • 口腔鼻腔瘻閉鎖術
  • 高齢犬の歯科麻酔管理

まで一貫して対応しています。「老犬だから治療できないかもしれない」と悩まれている方も、お気軽にご相談ください。