【歯科】使わない歯の歯周病、抜歯すべき?それとも残すべき?

🦷「できれば抜きたくない」—その気持ちに寄り添いながら

こんにちは。東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院 歯科診療担当の森田です。
歯科診療をしていると、飼い主さまからよくいただくのがこの言葉です。

「できるだけ歯を残したいです。」

もちろん、私たち獣医師も “抜かずに守る” ことを最優先に考えています。ですが、歯を残すことが かえって愛犬の負担になるケース も存在します。

今日は、そんな「使わない歯の歯周病」に関する症例をもとにお話しします。


🐶 症例紹介:13歳トイプードルの歯周病

今回の症例は13歳のトイプードルです。

治療前の犬の歯の写真。治療前なので歯石が沈着している。

定期的にスケーリング(歯石除去)を続けていたこともあり、犬歯や大臼歯などの“よく使う歯”は非常に健康的で、歯周病も軽度でした。
しかし、隣に並ぶ小臼歯(非機能歯) では状況が異なりました。

  • 歯肉の退縮と歯石沈着
  • 歯根部の骨吸収(中〜重度の歯周病)
  • 咬合(噛み合わせ)には関与していない

という状態で、「食べるためには使わない歯」 が、炎症の原因となっていたのです。


🦷 治療方針:機能していない歯は“守るより、負担を減らす”

この子はすでに高齢であり、今後「何度も麻酔下で処置を繰り返すことが難しい」と予想されました。

そのため、

  • 今後の再発リスク
  • 咬合への影響の少なさ
  • 麻酔リスクを最小限にする

これらを総合的に判断し、中〜重度の歯周病を認めた小臼歯を抜歯する方針を選択しました。

抜歯後は炎症が落ち着き、口臭も改善。
痛みのない快適な生活を送れるようになりました。


📚 症例からの学び|「抜く」「残す」は、重症度だけで決めない

歯科治療では、「歯周病の重症度」だけが判断基準ではありません。
特に高齢期では、以下の3つの視点が大切になります。

✅ 抜歯を検討すべき主な判断材料

  • 歯周病の重症度(骨吸収や動揺の有無)
  • その歯を実際に使っているか(機能歯か非機能歯か)
  • 今後、定期的な歯科処置ができる年齢・体力かどうか

「今この子にとって一番楽になる選択はどれか?」を軸に考えることで、将来的なトラブルや苦痛を防ぐことができます。


💬 飼い主さんへ|“抜歯=悪いこと”ではありません

「抜く」と聞くと、どうしてもネガティブに感じてしまうかもしれません。
ですが、実際には 痛みや炎症をなくしてあげるための“治療” であることが多いです。

特にシニア期では、「残す」ことよりも「快適に過ごせる口腔環境を整える」ことが何より大切です。


🏥 まとめ|“使わない歯”を残すことがリスクになる場合も

今回の症例のように、歯周病の進行+非機能歯+高齢期 の条件が重なると、抜歯は「最良の選択」となることがあります。

歯を温存したい、抜歯は避けたいというお気持ちも大切です。
そのうえで、一緒に「どの歯を守るか」「どの歯を手放すか」を考えることが、愛犬・愛猫の幸せにつながります。

🦷 「歯を残したい」「抜歯は避けたい」という方は、一度ご相談ください。
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では、保存治療から抜歯・再生療法まで、一頭一頭に最適な治療プランをご提案しています。


📞 ご予約・お問い合わせ:03-3403-8012(歯科担当:森田)
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