こんにちは。東京都渋谷区・港区にある東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院で歯科診療を担当している獣医師の森田です。
猫の歯科疾患の中でも非常に多く見られるのが「破歯細胞性吸収病巣(Tooth Resorption/TR)」です。 これはいわゆる猫の“虫歯”のようなもので、歯が内側から溶けていく進行性の病気です。
今回は、実際の症例をもとに「吸収病巣とは何か」「どのように診断し、どう治療していくのか」について詳しくご紹介します。
吸収病巣(TR)とは?
猫に多くみられる歯の吸収病巣は、破歯細胞という細胞が原因となり、歯が内側から溶けていく病態です。
この病気は見た目では分かりにくく、進行すると強い痛みや食欲不振を引き起こすこともあります。
【症例紹介】歯石除去時に発見されたTR
ある猫ちゃんは右下顎の臼歯にピンク色の肉芽組織が覆いかぶさっているのに飼い主様が気が付かれ、来院しました。

このような見た目の変化は、TRの典型的な所見の一つです。
歯科レントゲンでの診断
歯科用X線撮影を行ったところ、歯冠が虫食い状に溶けている像が明確に映り、TRと診断しました。

TRの診断にはレントゲン検査が必須です。肉眼だけでは進行度を正確に把握できません。
吸収病巣の分類(ステージ&タイプ)
ステージ分類(AVDC基準)
| ステージ | 吸収の進行度 |
|---|---|
| Stage 1 | 表面のエナメル質・セメント質に限局 |
| Stage 2 | 象牙質まで進行、歯髄は温存 |
| Stage 3 | 吸収が歯髄まで到達 |
| Stage 4a-c | 歯冠と歯根の大部分に吸収あり(a〜cは歯冠/歯根の残存比率で分類) |
| Stage 5 | 歯冠が完全に消失し、歯根も吸収され始めている |
この猫ちゃんは**Stage 3(歯髄まで吸収が進行)**でした。
タイプ分類(X線所見)
| タイプ | 吸収の分布 | 推奨される治療法 |
| Type 1 | 歯冠・歯頸部に限局、歯根は明瞭 | 通常の抜歯 |
| Type 2 | 歯根が骨に置換され境界が不明 | 歯冠切除(歯根は自然吸収を待つ) |
| Type 3 | Type1とType2が混在 | 各部分に応じた併用処置 |
本症例はType 3と判断し、歯冠切除と抜歯の併用を行いました。
治療の流れとポイント
猫のTR治療では、以下の流れを踏むことが重要です:
- 全身麻酔下での精密検査(歯科レントゲン)
- TRのステージ・タイプ分類
- 適切な外科的処置(抜歯、歯冠切除など)
治療後は痛みの緩和と食欲の回復が期待されます。
まとめ|猫の歯が赤い・溶けている?早期診断がカギ
猫の吸収病巣は見落とされやすく、進行してから発見されるケースが多くあります。
- 歯が赤く見える
- 歯ぐきにピンク色の肉が被っている
- ごはんの食べ方が変わった
といった症状に気づいたら、猫の歯科に対応した動物病院での診察をおすすめします。
🏥 猫の歯科治療なら東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院へ
当院では、猫専用の歯科レントゲン装置やマイクロ器具を使用し、吸収病巣をはじめとした猫の歯科疾患に専門的に対応しています。
東京都渋谷区・港区で猫の口腔ケアをご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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