東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院
こんにちは。歯科担当獣医師の森田です。
今回は「猫の口内にいる細菌たち」にスポットを当ててみたいと思います。
■ 口の中は細菌のすみか?
猫の口の中には、何百種類もの細菌が住んでいることをご存じでしょうか?
これらの細菌はふだん「バイオフィルム(歯垢)」という膜を作り、歯の表面や歯ぐきのまわりに張り付いて生活しています。
ただし、すべてが悪者というわけではありません。健康な状態では、良い菌と悪い菌がバランスを保ち、口内環境が安定しているのです。
■ でもバランスが崩れると…
「歯垢がたまる」「免疫が落ちる」「よだれが増える」などの条件がそろうと、悪玉菌が増殖し、口内の炎症が始まります。
とくに問題となるのが、以下のような歯周病関連菌です:
- ポルフィロモナス属(Porphyromonas):歯周ポケットにすみつき、歯ぐきを破壊
- フソバクテリウム属(Fusobacterium):炎症を悪化させる
- トレポネーマ属(Treponema):バイオフィルムの奥深くに潜む
これらの菌が関与することで、歯肉炎・歯周炎・歯のぐらつき・口臭・痛みといった症状が出てきます。
■ じゃあ、どうすればいいの?
実は、猫の歯周病は人間と比べても進行が早いことがわかっています。
なぜなら、猫は「痛みや違和感を隠す生き物」だから。飼い主が気づいた時には、かなり悪化していることも。
そのため、
- 定期的なスケーリング(全身麻酔下での歯石除去)
- 口腔内レントゲンによる見えない部分のチェック
- 家庭でできるケア(歯ブラシ・口腔ジェル・デンタルガム)
といった、“プロと家庭”でのダブルケアがとても大切です。
■ まとめ:細菌とうまく付き合うために
口内細菌は、悪さもしますが、うまく付き合えば健康維持に役立つ存在でもあります。
大切なのは、「細菌ゼロ」ではなく、細菌のバランスを整え、炎症が起こらないように保つことです。
当院では、歯周病のスクリーニング検査や口内ケアのアドバイスも行っています。
気になる症状がある方、しばらく歯のケアをしていない方は、ぜひお気軽にご相談ください。