【歯科】犬の切歯に対する歯周再生療法|人工骨材+PRF併用プロトコル症例紹介

こんにちは。
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院 歯科診療担当の森田です。

今回は、4歳のトイプードルの切歯歯周病に対して実施した再生療法の症例をご紹介します。
左上顎第二切歯を抜歯後、人工骨補填材とPRFを併用した歯周組織再建処置を行いました。
また、温存する第三切歯にも歯周病の影響が及んでいたため、隣接部にも同様の再生治療を施行しました。


🐾 症例概要:若齢でも進行する前歯部の歯周病

今回の患者は4歳のトイプードルで、「歯がグラついている」とのことで来院。
視診にて左上顎第二切歯の動揺と歯肉退縮を確認し、歯科レントゲンでは歯槽骨の吸収とポケット形成が明らかでした。

中等度~重度の歯周炎と診断し、第二切歯は抜歯、第三切歯は再生療法を併用して温存を目指す治療方針としました。


🦷 使用した再生材料と処置内容

抜歯部および温存部の歯周ポケットに対し、以下の再生プロトコルを採用しました。

材料特徴
β-TCP系の骨補填材(人工骨)吸収性・骨導性に優れ、歯槽骨の再建を促進
PRF(Platelet-Rich Fibrin)自家血液由来のフィブリン膜。成長因子を放出し、治癒を加速

この2つの材料を併用することで、抜歯後の骨欠損を補い、歯周組織の再構築を目指しました。


🛠️ 処置の流れ(概要)

  1. 全身麻酔下にて口腔内精査
  2. 左上顎第二切歯の抜歯・抜歯窩の掻爬と洗浄
  3. 骨補填材の填入+PRFでの被覆
  4. 隣接する第三切歯の歯周ポケットに同様の再生処置
  5. フラップを閉鎖縫合し終了

術後は内服とブラッシングのサポート指導を実施。
約2ヶ月後の再診で炎症所見は消失し、歯槽骨の形態も安定していました。


💡 切歯の歯周病も見逃さず、早期治療が鍵

前歯(切歯)は見た目にはトラブルが少ないと思われがちですが、

  • 歯列が密で汚れが溜まりやすい
  • 唾液の停滞により細菌が増えやすい
  • ブラッシングの死角になりやすい

などの理由から、意外にも歯周病が進行しやすい部位です。
さらに、前歯の喪失は食事や舌の動きに大きな影響を与えるため、保存治療を検討する価値があります。


✅ まとめ

  • 🐶 本症例では人工骨補填材+PRFによる歯周組織再建を実施
  • 🦷 歯を守るだけでなく、歯槽骨の維持がQOL維持にもつながる
  • 🕒 歯周病の早期発見・早期介入が治療成績を大きく左右します

🏥 東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では

当院では、犬猫の歯周病に対する再生療法・抜歯・根管治療など、症例に応じた専門歯科診療を行っています。
「歯を抜かずに治せるか知りたい」「できるだけ負担の少ない方法を選びたい」といったご相談も歓迎しております。


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