【歯科】猫の歯が溶ける原因と治療法|吸収病巣のタイプとステージ分類⑤

猫の「虫歯」ってどんな病気?

こんにちは。東京動物皮膚科センターで歯科診療を担当している獣医師の森田です。
これまでのコラムでもご紹介してきたとおり、**猫のいわゆる「虫歯」**は、
**破歯細胞性吸収病巣(Tooth Resorption/通称:TR)**と呼ばれる病気で、歯が内側から溶けていく病態です。

今回は、実際の症例をもとに、猫の虫歯(吸収病巣)の診断と治療法について詳しく解説します。


【症例】猫の虫歯(吸収病巣)に気づいたきっかけ

こちらの猫ちゃんは、歯石除去を希望でいらした際に偶然虫歯に気がつきました。
右下顎の臼歯に虫歯を強く疑うピンク色の肉芽組織が覆いかぶさっています。


【診断】猫の歯が溶ける「破歯細胞性吸収病巣」とは?

歯科用レントゲンで確認すると、歯冠が虫食い状に溶けている像が見られ、
**「破歯細胞性吸収病巣(Tooth Resorption:TR)」**と診断しました。


【分類】猫の吸収病巣にはステージとタイプがある

猫の虫歯(TR)は、進行度を示すステージ分類と、レントゲン上の病態によるタイプ分類で評価されます。

▶ ステージ分類(AVDC基準)

ステージ吸収の範囲
Stage1表面のエナメル質やセメント質のみ吸収
Stage2象牙質まで吸収が進行、歯髄は温存
Stage3吸収が歯髄に達する(神経が侵される)
Stage4歯の広範囲が吸収(a〜cで歯冠と歯根の比率別)
Stage5歯冠が完全に消失し、歯根も吸収されつつある

この猫ちゃんの臼歯は吸収が歯髄に達しており、Stage3の吸収病巣と診断しました。


▶ タイプ分類(X線所見)

タイプ吸収像主な治療法
Type1吸収が歯冠や歯頸部に限局、歯根は正常抜歯(通常の方法)
Type2歯冠と歯根の境界が消失し、骨に置換歯冠切除(残根の吸収を待つ)
Type3Type1とType2が混在各部に応じた処置を組み合わせる

この症例では、Type3(明確な歯根構造あり)と診断し、歯冠切除及び抜歯処置を実施しました。


【治療】吸収病巣の治療はX線診断がカギ

猫の虫歯は、見た目だけでは病変の深さがわからないため、歯科用レントゲンによる診断が不可欠です。

この猫ちゃんは、全身麻酔下で歯科X線撮影とスケーリングを同時に実施しました。
TRが見つかった場合、そのステージとタイプに応じた治療方針の選択がとても重要になります。


【まとめ】猫の虫歯(吸収病巣)は早期発見と適切な判断がカギ

  • 猫の虫歯(吸収病巣)は進行性の病気で、自然治癒しません
  • 治療法は、吸収のステージとタイプに応じて異なります
  • 歯科用レントゲンでの診断が必須です

もしもご自宅の猫ちゃんに、歯が赤く見える・ピンク色の肉がかぶっている・ご飯の食べ方が変わったなどの症状があれば、
猫の歯科に対応した動物病院での早期診断をおすすめします。


🏥 猫の歯科診療なら東京動物皮膚科センターへ

当院では、猫の歯科専用レントゲン装置やマイクロ器具を用いた吸収病巣の診断・治療に対応しています。
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