【歯科】猫の大臼歯歯冠切除⑤

こんにちは。
東京動物皮膚科センター 歯科診療担当獣医師の森田です。

猫においても、人と同様に**不正咬合(噛み合わせ異常)**がみられることがあります。
不正咬合は、歯の物理的接触によって口腔内の粘膜や歯肉に傷害を与えることがあり、慢性的な炎症や潰瘍の原因となるため、適切な対応が求められます。

本稿では、「歯冠切除」という外科的処置について、症例を交えながら解説いたします。


歯冠切除とは

歯冠切除とは、噛み合わせによって粘膜や歯に過度な接触が生じている歯に対し、歯の冠部を部分的に切除・研磨することで、異常接触を解消する処置です。

不正咬合の中でも、以下のような病的接触が認められる場合に処置が検討されます。

  • 対合歯や軟部組織(歯肉・粘膜・口蓋)に接触し、炎症や潰瘍などの病変を誘発している
  • 正常な萌出方向を阻害し、将来的に歯列異常を引き起こす可能性がある

症例紹介|上顎の大臼歯が下顎の口腔粘膜に接触していた猫

今回の症例は、高齢猫です。
かかりつけ医で歯科処置を行った際に上顎の大臼歯が下顎の口腔粘膜に明らかに接触していることが判明しました。

このまま放置した場合、将来的な粘膜潰瘍や疼痛が懸念されたため、歯冠切除による矯正的処置を同時に実施しました。

処置の概要:

  1. 歯科用レントゲンを撮影し、歯髄との位置関係を正確に評価
  2. 接触部位を慎重に削合し、粘膜への機械的刺激が生じない高さまで調整
  3. 処置後、歯科用コンポジットレジン(樹脂)により歯面を保護
  4. 歯肉粘膜に抗炎症剤を注射

本処置により、口腔粘膜への異常接触は解消され、将来的な病変発生リスクを回避することができました。


猫の不正咬合

猫における不正咬合は、審美的目的ではなく機能的・病理的観点から治療が必要とされることが少なくありません。

また、猫は痛みのサインを外に出しにくいため、以下のような間接的な症状がみられる場合には、歯科的評価が推奨されます。

  • 食餌中の違和感(片側のみで噛む、食べこぼしが多い 等)
  • 口腔内を触ることを嫌がる
  • よだれが増える、口臭が強くなる

まとめ|歯の接触が認められる場合は早期の相談を

猫の不正咬合によって歯が粘膜や他の歯に過剰接触している場合、それが病的刺激となり、歯周疾患や口内炎などを引き起こす要因となることがあります。

こうしたケースでは、早期の歯科的評価と処置の検討が重要です。
歯科処置の適否は、画像診断と口腔内所見の総合的な評価に基づいて判断されます。


猫の歯並び・口腔内トラブルでお悩みの方へ

東京動物皮膚科センターでは、猫の歯科疾患に関する診療も行っております。
不正咬合や歯の接触が気になる場合には、まずは一度ご相談ください。

📞 ご予約・お問い合わせ:03-3403-8012(歯科診療担当:森田)


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