こんにちは、東京動物皮膚科センターの馬場です。
今回は、犬や猫で見られる「毛包虫症(ニキビダニ症)」についてお話しします。
この病気は、体の表面に寄生する「ニキビダニ」が原因となり、皮膚トラブルを引き起こすことがあります。
🪲 毛包虫症とは?
毛包虫症は、ニキビダニ(Demodex spp.)が毛包や皮脂腺に寄生し、皮膚炎を引き起こす病気です。
犬と猫、それぞれで寄生するダニの種類が異なり、症状も少し異なります。
🐶 犬の毛包虫症
- 主な原因ダニ:
- Demodex canis:最も一般的で、正常な皮膚にも常在。
- Demodex injai:背中に脂漏性皮膚炎を引き起こすことが多い。
- Demodex cornei:毛包ではなく角層に寄生し、表在性の炎症を引き起こす。
- 発症のタイプ:
- 局所性:特に子犬で顔や四肢に限局的な脱毛が見られる。
- 全身性:若齢犬は遺伝的素因(シャーペイ、フレンチブルドッグなど)が関与。
成犬では内分泌疾患(甲状腺機能低下症)、免疫抑制(ステロイド使用)、腫瘍が背景にあることが多い。
- 症状:
- 脱毛、紅斑(赤み)、痂皮(かさぶた)
- D. injai:背部に脂漏性皮膚炎


🐱 猫の毛包虫症
- 主な原因ダニ:
- Demodex cati:非伝播性、免疫抑制(FIV、FeLV、ステロイド治療)が誘因。
- Demodex gatoi:伝播性、角層に寄生し、強いかゆみを引き起こす。多頭飼育で問題になりやすい。
- 症状:
- D. cati:顔、目の周り、耳道に脱毛、紅斑
- D. gatoi:強いかゆみ、対称性脱毛
- 注意点:D. gatoiは他の猫に感染しやすいため、多頭飼育環境では早期対策が必要です。
🔍 どうやって診断するの?
毛包虫症の診断は直接検査が基本です。
- 皮膚掻爬検査:患部を刃物で軽く掻いて、ダニを確認
- 抜毛検査:毛包内にダニが存在するか確認
- 粘着テープ検査:角層に寄生するD. gatoiで有効
- 治療反応診断:検査で確認できなくても、治療で症状が改善する場合もあります。
⚠️ 猫のD. gatoiは検出が難しい
- かゆみが強い場合、検査で見つからなくても治療を開始することがあります。
- 多頭飼育の場合、すべての猫で検査を行うことが望ましいです。
💊 治療方法:今は治療が進歩しています!
以前は治療が難しかった毛包虫症ですが、近年はイソキサゾリン系製剤が治療の中心になっています。
✅ 犬の治療
- イソキサゾリン系:フルララネル(ブラベクト®)、アフォキソラネル(ネクスガード®)、ロチラネル(クレデリオ®)、サロラネル(シンパリカ®)など
- 治療期間:最低2か月。臨床症状が消失し、再発がないことを確認するまで続けます。
✅ 猫の治療
- D. cati:イソキサゾリン系(フルララネル、エサフォキソラネル)
- D. gatoi:多頭飼育の場合、すべての猫で同時治療が必要
✅ 補助治療
- かゆみが強い場合:抗炎症薬(プレドニゾロン、オクラシチニブ)
- 二次感染:抗菌薬の使用
🌟 まとめ:早期発見・早期治療で健康な皮膚を守りましょう!
適切な診断と治療を行えば、多くの場合は完治が期待できます
「最近、うちの子、毛が薄くなってきたかも…?」
「かゆがっているけど原因がわからない…」
そんな時は、ぜひ一度ご相談ください。