こんにちは、東京動物皮膚科センターの馬場です。
今回は、猫に見られる少し変わった皮膚病、「無痛性潰瘍(indolent ulcer)」についてご紹介します。
💡無痛性潰瘍ってどんな病気?
「唇の上がへこんで赤くなってる…」
「かさぶたみたいだけど、痛がっていない…?」
それ“無痛性潰瘍(indolent ulcer)”かもしれません。
これは、上唇のふち(特に犬歯の近く)にできる浅くて赤い潰瘍で、痛みも痒みもほとんどありません。
飼い主さんがふとしたときに気づくことが多く、猫さん自身は元気そうにしていることもよくあります。
📌そしてこの無痛性潰瘍は、「好酸球性肉芽腫群(Eosinophilic Granuloma Complex, EGC)」と呼ばれる猫特有の皮膚疾患群のひとつです。
EGCには他にも「好酸球性プラーク」や「好酸球性肉芽腫」などがあり、同時に複数のタイプが見られることもあります。

どうしてできるの?
無痛性潰瘍の原因は一つではなく、多くの場合アレルギーや感染が関係しています。
よくある原因:
- ノミアレルギー(ノミに刺されることで体が過剰反応)
- 食物アレルギー
- 環境アレルギー(ハウスダストや花粉など)
- 潰瘍部の細菌感染
潰瘍自体が目立っていても、それはあくまで「症状の一部」であり、根本の原因を探すことが治療のカギになります。
検査や診断は?
基本的にはその特徴的な見た目で診断できます。ただ、似た病気の除外や、基礎にある疾患の調査のため必要な検査をすることがあります。
- 潰瘍の表面をこすって細胞診検査(細菌や炎症の有無を確認)
- 感染があれば抗生物質の投与
- ノミ予防や食事療法(除去食)によるアレルギーの評価
- 必要に応じて皮膚の一部を採って検査(生検)
また、無痛性潰瘍以外にも皮膚に赤い斑点(好酸球性プラーク)や盛り上がったしこり(好酸球性肉芽腫)などが見られる場合、EGCとして総合的に診断・治療していくことが大切です。
治療法は?
無痛性潰瘍は、原因に応じた治療が最も効果的です。
主な治療:
- ノミ駆除の徹底(すべての同居ペットにも)
- アレルギーの評価と対応(除去食・環境アレルゲンの検査など)
- 感染がある場合は抗生剤治療
- 症状が強い場合にはステロイドや免疫抑制剤
※ただし、長期的な薬物治療だけに頼るのではなく、根本原因の把握と対策が重要です。
よくなるの?再発する?
多くの猫さんでは、原因が特定されて適切な治療が行われれば改善します
ただし、原因がはっきりしない場合や再発を繰り返す場合は、長期間にわたる管理が必要になることもあります。
📌まとめ
- 上唇のふちにできる赤い潰瘍、それは無痛性潰瘍かもしれません
- 見た目は派手でも、猫さん自身は痛がらないことが多いです
- 背景にはアレルギーや感染があることがほとんど
- 好酸球性肉芽腫群(EGC)の一部として見つかることも多いです
- 根本原因に合わせた治療が重要
- 繰り返す場合は、さらに詳しい検査や継続的なケアが必要に
気になる症状があれば、どうぞお早めにご相談ください🐾
📞 東京動物皮膚科センターのお問い合わせ・ご予約はこちら ⬇
03-3403-8012