こんにちは。皮膚科の馬場です。
今回は少しマニアックな被毛のお話です。
ヒゲの先端が“たまねぎ”のように膨れる?
猫のヒゲ(vibrissae)は感覚器としてとても大切な役割を果たしています。通常はすっとまっすぐ伸びているのですが、まれに 先端がたまねぎのように球状に膨らんでいるのを見かけることがあります。
この所見は、もともと アビシニアンで最初に報告されたことから、当初は猫種特異的な先天性疾患と考えられていました。しかし、その後はペルシャ猫や雑種猫でも見つかるようになり、実際に私自身もこれまでに1例だけ経験しています。
原因はどこにあるのか?
長らく原因は不明とされていましたが、近年の研究により、毛幹をつくるために重要な接着分子「デスモグレイン4(DSG4)」をコードする遺伝子の変異が関与していることがわかってきました。
DSG4は毛包の中で隣り合う細胞をつなぐ「デスモソーム」という構造の一部を担っており、正常な毛幹形成に欠かせないタンパク質です。この遺伝子に異常があると毛幹がうまく形成されず、結果としてヒゲの先端が膨化し、いわゆる“たまねぎ状”の形態をとるのです。
この異常は、マウスやラット、さらには人の「局所性常染色体劣性乏毛症(Localized autosomal recessive hypotrichosis, LAH)」とも関連しており、種を超えて共通する遺伝的背景があることも分かってきています。

臨床的な意味は?
幸い、この“たまねぎヒゲ”そのものが猫の健康に大きな影響を与えることはほとんどありません。
ただし、被毛やヒゲの異常は皮膚や免疫の疾患と関連する場合もあるため、臨床現場では「ちょっと珍しいけど、豆知識として知っておきたい所見」といえるでしょう。
まとめ
- 猫のヒゲ先端が“たまねぎ”のように膨れる現象は、アビシニアンをはじめとした一部の猫種で報告されている。
- 原因は、毛幹形成に必須な遺伝子「DSG4」変異によるものと考えられている。
- 臨床的な問題は少ないが、知っていると「おっ」と思えるマニアックな所見であり、豆知識として喜ばれる話題。
わんちゃんや猫ちゃんの皮膚や耳でお困りの際は、お気軽にご相談ください。