🦷犬の歯が折れたら“痛がっていなくても早期受診”が鍵
「犬の歯が折れたけど元気そう」
「奥歯が欠けているけど様子を見ていい?」
こうしたご相談は非常に多くあります。
しかし、犬の破折歯は見た目以上に深刻です。
痛がっていなくても、内部では感染が進行していることがあります。
今回ご紹介するのは、5歳 小型Mix犬|左上顎第四前臼歯(3根歯)の破折症例です。
発見から数日以内に受診されたことで、抜歯を避け、根管治療によって歯を温存できたケースでした。
🐶奥歯が折れている気がする

飼い主様は、「硬いおもちゃを噛んでいた後に奥歯が短くなっている」と気づかれました。
診察時、左上顎第四前臼歯の歯冠破折を確認。
歯髄(神経)の露出が疑われました。
第四前臼歯は犬で最も重要な咀嚼歯であり、*3本の歯根を持つ“3根歯”*です。
🔍破折歯のリスク|なぜ放置は危険なのか?
結論から言うと、折れた歯は細菌感染の入口になります。
歯の内部には神経(歯髄)があり、露出すると以下の経過をたどります。
- 歯髄炎
- 歯髄壊死
- 根尖性歯周炎
- 歯ぐきの腫れや膿(内歯瘻)
- 慢性的な痛み
上顎歯では、感染が鼻腔へ波及し慢性鼻炎につながることもあります。
破折歯は数か月〜数年かけて静かに悪化するため、「元気そうだから大丈夫」と判断するのは危険です。
🩺診断|歯科用レントゲンでの精査

見えていない歯根を評価するため、全身麻酔下で歯科用レントゲン撮影を実施しました。
確認項目は以下です:
- 3本それぞれの歯根の状態
- 根尖部に感染がないか
- 歯根破折の有無
幸い、根尖病変は認められず、根管治療による温存が可能と判断しました。
🦷治療経過|第四前臼歯の根管治療
① 根管形成・清掃
3本の根管を個別に処理。
- 感染歯髄の除去
- 機械的拡大
- 消毒洗浄
第四前臼歯では、3根すべてを確実に処理することが成功の鍵となります。
② 根管充填
無菌化した根管内に充填材を封鎖。再感染を防ぎます。
③ 歯冠修復(コンポジットレジン)
欠けた歯冠部を修復。
- 噛む機能の回復
- 強度の確保
- 再破折予防
第四前臼歯は咬合力が強いため、形態と強度の設計が重要です。
⏱破折歯は“時間との勝負”

今回の症例では、破折から数週以内の受診だったため温存が可能でした。
一般的に:
- 1〜2日以内 → 神経温存の可能性
- 数日〜数週 → 根管治療
- 長期放置 → 抜歯になるケース増加
早い判断ほど歯を残せる可能性が高まります。
🏠自宅で気づくチェックポイント

「犬の歯が折れたかも?」と感じたら、以下を確認してください。
- 反対側より歯が短い
- ピンク色の組織が見える
- 歯の先端が尖っている
- 黒く変色している
いずれかに該当する場合、破折歯の可能性があります。
🐾まとめ|犬の歯が折れたら様子見はしない
- 犬の破折歯は見た目以上に深刻
- 痛がらなくても内部で感染が進行
- 早期なら歯を残せる可能性がある
- 放置すると抜歯リスクが高まる
「犬の歯が折れた」その時点で、受診のサインです。
🏥歯科診療について
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院では、犬の破折歯に対して歯科用レントゲンを用いた精密診断を行い、状態に応じた保存治療や外科的治療の選択肢をご説明しています。
「歯を残せる可能性があるのか知りたい」
「今からでも間に合うのか相談したい」
そのような場合は、判断材料として一度ご相談ください。