「もう16歳だし、できるだけ麻酔はかけたくないですね…」
高齢のワンちゃんを連れて来院される飼い主様から、よく伺う言葉です。
当院では、歯をできるだけ温存する治療に力を入れています。
ですが一方で、高齢犬の場合、あえて抜歯を選択した方が、その後の生活が楽になるケースも少なくありません。
今回は、16歳のミニチュアダックスフントの症例をもとに、「歯を残す治療」と「抜歯」のバランスについてお話しします。
🦴ダックスフントは歯周病が多い犬種

ミニチュアダックスフントは、歯周病が多い犬種としてよく知られています。
その理由は、
- 顎が細く歯が密集しやすい
- 前歯〜奥歯に歯石がたまりやすい
- 若い頃は症状が目立ちにくい
といった特徴があるためです。
その結果、気づいたときには重度の歯周病になっているというケースも珍しくありません。
🩺症例紹介|16歳 ミニチュアダックスフント
今回ご紹介するのは、16歳のミニチュアダックスフントです。
「口臭が強く、歯ぐきから血が出ることがある」との主訴で来院されました。

診察と歯科用レントゲン検査の結果、複数歯で重度の歯槽骨吸収が確認され、重度歯周病と診断しました。
抜歯が適応になる中程度異常の歯周病の歯は抜歯を行い、歯肉を切開して抜歯窩を埋める縫合処置も同時に行いました。
麻酔時間は1時間半ほどで全ての検査と治療を終えました。
⚖️なぜ今回は「歯を残す治療」を選ばなかったのか
当院では通常、
- 歯周外科
- 再生療法
- 保存的治療
などを用いて、歯を残す可能性を検討します。
しかしこの子の場合、
- 16歳という高齢
- 歯周病が広範囲・慢性的
- 治療後も歯周病が再発するリスクが高い
という点を総合的に判断しました。
高齢犬では、「治療 → 再発 → 再治療」を繰り返すこと自体が体への負担や生活の質(QOL)低下につながることがあります。
そこで今回は、将来の再発防止を最優先し、痛みや感染の原因となっている歯を抜歯する方針を選択しました。
🦷高齢犬における抜歯は“後ろ向きな治療”ではない

「抜歯=かわいそう」と感じる方も多いかもしれません。
ですが重度歯周病の歯は、すでに“使える歯”ではないことも少なくありません。
感染した歯を残すことで、
- 慢性的な痛み
- 食欲低下
- 心臓や腎臓への悪影響
が続いてしまうリスクがあります。
そのため抜歯によって痛みや感染から解放されることで、むしろ表情や食欲が改善する高齢犬も多く見られます。
🩹処置後の変化と飼い主様の声
処置後、
- 口臭が明らかに軽減
- 食事のスピードが改善
- 以前より元気に過ごせるようになった
といった変化が見られました。
飼い主様からは「もっと早く相談すればよかった」というお言葉をいただくこともしばしばあります。
高齢での全身麻酔は身構えるものもありますが、事前診察と麻酔前検査、そして症例に合わせた全身麻酔などの配慮によって麻酔リスクに備えることができます。
🐾当院の考え方 ― 年齢に合わせた歯科治療
当院では、
- 若齢〜中齢犬では歯を温存する治療
- 高齢犬では再発リスクを抑える治療
と、その子の年齢・状態・生活に合わせて治療方針を考えています。
歯を残すことがゴールではなく、「痛みなく、食べて、穏やかに暮らせること」が最優先です。
🐶まとめ|高齢ダックスの歯科処置で大切なこと
- ダックスフントは歯周病が進行しやすい犬種
- 高齢犬では歯周病の再発リスクを考慮する必要がある
- 歯を残す治療が最善とは限らない
- 抜歯が生活の質を改善することもある
「もう歳だから仕方ない」ではなく、今からでもできる歯科ケアはあります。
🏥東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院より
当院では、歯を温存する治療を大切にしつつ、
高齢犬では将来を見据えた抜歯の選択も丁寧にご説明しています。
「高齢だから歯科治療は無理かも…」と悩まれている方も、
まずはお気軽にご相談ください。