【皮膚】猫の落葉状天疱瘡② ― 治療の考え方と薬剤選択


こんにちは東京動物皮膚科センターの馬場です。
寒さが本格化してきましたね。

今回は前回に続き、猫の落葉状天疱瘡(Pemphigus foliaceus:PF)における治療について整理します。


🩺 猫PFの治療反応性と予後

猫のPFは、全身性ステロイド療法に比較的良好に反応する疾患とされており、文献的には約50%前後の症例で良好な治療反応が報告されています。
多くの症例では長期あるいは生涯にわたる治療管理が必要となる可能性がありますが、適切な治療介入ができれば予後は比較的良好です。


⚠️ 治療抵抗例も?

一方で、

  • ステロイド単独で十分な寛解が得られない
  • 再燃を繰り返す
  • 副作用により十分な免疫抑制が行えない

といった治療抵抗性・重症例も一定数存在します。
これらの症例では、免疫抑制薬の副作用や二次感染が重なり、最悪の場合、生命予後に影響するケースもあります。


💊 猫落葉状天疱瘡における薬剤選択の基本的な考え方

治療薬の具体的な投与量や選択については表にまとめます。

薬剤投与量
Systemic Glucocorticoids 
プレドニゾロン2 mg/kg/日
メチルプレドニゾロン2 mg/kg/日
トリアムシノロン0.1–0.3 mg/kg/日
デキサメタゾン0.1–0.2 mg/kg/日
Non-Steroidal immunosuppressants 
シクロスポリン5–10 mg/kg/日
クロラムブシル0.1–0.2 mg/kg/日〜隔日
(オクラシチニブ)1.0mg/kgを12時間毎


猫特有の注意点として以下は必ず押さえておく必要があります。


🚫 プレドニゾンは推奨されない

猫はプレドニゾンを活性型であるプレドニゾロンへ効率よく変換できないため、
必ずプレドニゾロンを使用します。


🚫 アザチオプリンは原則使用しない

アザチオプリンは猫では、
重度の骨髄抑制や肝毒性を起こすリスクが高く、PF治療には不適です。


🔄 代替免疫抑制薬の選択は慎重に

クロラムブシル、シクロスポリンなどは症例によって選択肢となりますが、
感染症リスクや併存疾患を十分に考慮したうえで使用する必要があります。


🔬 「どこに効いている薬か」を理解する(獣医向け)

免疫介在性疾患の治療では、
「この薬が免疫反応のどのプロセスを抑えているのか」
を理解したうえで処方することが重要です。

ステロイドは、

  • 自己抗体産生
  • 炎症性サイトカイン産生
  • 炎症細胞の遊走・活性化

といった複数の免疫段階に広く作用します。
一方、他の免疫抑制薬は、より特定の免疫プロセスを標的としているため、併用時の意義や限界を把握することが治療設計の質を左右します。


✏️ まとめ:治療編のポイント

  • 猫のPFはステロイド反応性が比較的良好だが、治療抵抗例も存在する
  • 猫特有の薬物動態・副作用を理解した薬剤選択が必須
  • 免疫疾患の病態と薬剤作用点を理解することが、長期管理の鍵となる

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