症例紹介:右上第四前臼歯の破折
今回は、犬で非常に多い 上顎第四前臼歯(いわゆる“裂肉歯”)の破折 に関する症例をご紹介します。

この歯は硬いものを噛む際に最も力がかかる「咀嚼の主力歯」であり、破折や歯髄炎を起こしやすい歯として知られています。
今回の症例では幸いにも神経(歯髄)が露出していない 「非露髄破折」 でした。
🔍 非露髄破折とは?
犬が硬いおもちゃや骨・アキレス腱などを噛んでいて、歯が部分的に欠けてしまうことがあります。
このとき、歯の内部の神経(歯髄)が露出していない状態を「非露髄破折」といいます。
一見すると軽度な欠けに見えますが、放置すると…
- 象牙質がむき出しになり「しみる」などの知覚過敏が起こる
- 細菌感染により歯髄炎・根尖病変を起こすリスク
- 破折の進行により露髄へ悪化する可能性
- 歯石沈着の温床になる
といった二次的なトラブルを引き起こします。
露髄しているかどうかはエキスプローラーと呼ばれる器具を折れた歯の象牙質に当て、引っかかりがないかを確認します。

✅ 露髄していなくても歯冠修復が必要
「痛がっていないから大丈夫」と思われがちですが、露髄していない破折も治療が必要です。
早期に歯冠修復(レジン充填など)を行うことで、次のようなメリットが得られます。
- 象牙細管からの細菌侵入を防ぐ
- 破折の進行を抑える
- 咀嚼時の不快感を軽減し、歯の長期保存につなげる
また、露髄した場合には早急な治療により歯や歯髄を温存できる可能性もあるため、まずは動物病院を受診することが大切です。
🔧 歯冠修復の流れ(全身麻酔下)
犬や猫の歯科治療は、動物が動かず安全に行うために全身麻酔下で実施します。
処置の流れは以下の通りです。
1️⃣ 欠けた部位の確認・処置範囲の決定
2️⃣ レジンなどの材料で歯冠を形成
3️⃣ 研磨処理で滑らかに仕上げ
4️⃣ 歯科レントゲンで修復の確認・記録
処置時間は約30〜60分程度で、同時にスケーリングや他歯の検査も行うことができます。

🐶 まとめ|「痛がらない=問題なし」ではない
犬や猫の破折歯は、症状が目立たなくても放置すると歯髄炎や根尖性病変に進行することがあります。
- 歯が欠けたけど痛がっていない
- 露髄していないから放っておいてもいい?
そんな時こそ、早めの診断と修復が歯を守るポイントです。
早期に処置することで、抜歯や根管治療を回避できる可能性が高まります。
🏥 東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院の歯科診療
当院では、犬猫の歯科診療に特化した設備を用い、破折歯の診断から歯冠修復・歯髄保存治療・予防ケアまで幅広く対応しています。
📞 ご予約・お問い合わせ:03-3403-8012(歯科担当:森田)
📍 東京都渋谷区神宮前