こんにちは。皮膚科の馬場です。
現在スペインで行われている欧州獣医皮膚科学会に来ています!
新しいヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬についての発表がありましたので、いち早くお届けします!
第二世代JAK阻害薬 Numelvi™(アチンビシチニブ)
犬のアトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎は、日常診療で頻繁に遭遇する疾患です。痒みと皮膚病変を特徴とし、その病態はサイトカインを介した免疫学的カスケードによって形成されます。近年、この経路を制御する分子標的薬として注目されているのが ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬 です。
第一世代JAK阻害薬の課題
これまでに使用されてきた第一世代JAK阻害薬(例:オクラシチニブ)は、かゆみを速やかに抑える効果があります。しかし、その作用は JAK1だけでなくJAK2やJAK3/TYK2にも及ぶ ため、以下のようなリスクが指摘されてきました。
- 感染症のリスク増加(免疫応答への影響)
- 腫瘍発生リスク(腫瘍免疫の抑制)
- 血液学的副作用(貧血、血小板減少など)
第二世代JAK阻害薬の登場
そこで開発されたのが、JAK1に選択的に作用する第二世代JAK阻害薬 です。JAK1をターゲットにすることで、炎症・痒みを抑制しながら、JAK2やJAK3阻害に伴う副作用を回避することが期待されています。ヒト医療では既に、JAK1選択的阻害薬が第一世代よりも安全性に優れることが示されています。
Numelvi™(アチンビシチニブ)の特徴
MSD Animal Health が開発した アチンビシチニブ(製品名:Numelvi™)は、犬用に承認された第二世代JAK阻害薬です。
- JAK1に対して高い選択性(JAK2、JAK3、TYK2への作用は最小限)
- 1日1回の経口投与
- 犬のアトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎に有効
臨床試験データ
- 対象:6か月齢以上、2kg以上の犬
- 投与量:0.8–1.2 mg/kg、1日1回投与
- 主な結果:
- 白血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビンに有意な低下なし
- 好酸球数の減少(炎症抑制作用と一致)
- 副作用は少なく、下痢・嘔吐などの軽度な消化器症状が一部でみられたのみ
- 感染症や腫瘍リスクに関する大きな懸念は現時点で報告されず
また、過量投与試験(最大5倍量)でも大きな問題は生じず、ワクチン接種後の免疫応答も維持されていました。
使用上の注意点
- 妊娠・授乳中、繁殖犬では安全性が確立されていないため使用は推奨されません。
- 他薬との併用(ステロイド、シクロスポリン、抗菌薬、抗真菌薬など)は問題なく行えると報告されています。
まとめ
- 第一世代JAK阻害薬(例:オクラシチニブ)は有効だが、副作用の懸念があった
- 第二世代(アチンビシチニブ)は JAK1選択的作用により、安全性と有効性のバランスを改善
- 臨床試験では軽度な消化器症状以外の大きな副作用はなく、犬のアトピー・アレルギー性皮膚炎に有効
👉 Numelvi™は、犬のアトピー性皮膚炎治療における 新しい選択肢 として期待されます。
日本での承認の情報はまだですが、今後も最新情報をお届けします!


