【皮膚】クリプトコッカス症について

こんにちは。東京動物皮膚科センターの馬場です。
今回はクリプトコッカス症とういう少しマニアックなテーマですが、大切なお話です。

「クリプトコッカス症(Cryptococcosis)」は、Cryptococcus neoformansという真菌(カビの仲間)によって引き起こされる感染症です。
犬にもみられますが、特に若い猫での発症が多いとされています。

この真菌は、土壌や鳥のフン(特にハトのフン)に広く存在しており、ペットが外に出ることで、空気中の胞子を吸い込んで感染します。最初は鼻や肺などの呼吸器に感染し、その後、皮膚・眼・脳(中枢神経)などに広がることもあります。

どんな症状が出るの?

最もよくみられるのは、以下のような上気道の症状です:

  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 鼻のあたり(鼻梁)のふくらみやしこり

進行すると、以下のようなより深刻な症状が現れることもあります:

  • 皮膚のしこりや潰瘍
  • 目の異常(視力低下、失明)
  • ふらつき、けいれんなどの神経症状

これらの症状は他の病気でも見られるものですが、特に皮膚症状として「鼻のあたりのしこり」や「膿が出ているような病変」が見られる場合は、クリプトコッカス症も鑑別疾患として考える必要があります。
外に出る猫やハトのいる環境にいる動物では、注意が必要です。

診断と治療について

この病気は、細胞診(細胞を顕微鏡で見る検査)や真菌培養検査、PCR(遺伝子検査)、皮膚生検などで診断します。
顕微鏡で見ると、大きな“莢膜(きょうまく)”を持った酵母様の真菌が見つかることが多く、診断の決め手になります。

治療は抗真菌薬の内服が中心となり、以下のような薬が使われます:

  • イトラコナゾール
  • フルコナゾール
  • アムホテリシンB(重症例で使用)

治療期間は数ヶ月に及ぶことが多く、症状が良くなった後も再発防止のためにさらに1ヶ月以上治療を続けることがあります。

予後(回復の見込み)は?

  • 猫の場合:中枢神経の症状がなければ、治療によって十分回復が見込める病気です。
  • 犬の場合:中枢神経(脳)に症状が出るケースが多く、やや難治性であることが知られています。

最後に

クリプトコッカス症は一般的な病気ではありませんが、「鼻が腫れている」「しこりができた」「膿が出ている」といった症状がある場合には、よくある皮膚病だけでなくこういった珍しい感染症も視野に入れた診断が重要になります。
当センターでは、皮膚の症状から感染症や腫瘍まで幅広く対応しています。
気になる症状がある場合は、お早めにご相談ください。

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