【皮膚】犬と猫の皮膚糸状菌症について

こんにちは。東京動物皮膚科センターの馬場です。
今回は、犬・猫でよくみられる皮膚のカビ感染症、「皮膚糸状菌症」についてご紹介します。
皮膚糸状菌症は動物だけでなく人にも感染する重要な病気です。正しい知識と適切な対策が大切になります。


🦠 皮膚糸状菌症とは?

皮膚糸状菌症(Dermatophytosis)は、皮膚・被毛・爪の角質組織に感染する真菌症です。
感染は犬猫のみならず、ウサギ、げっ歯類、爬虫類にも起こり、さらに人への感染(人獣共通感染症)もあります。

主な原因菌

  • Microsporum canis(動物好性菌)
     → 犬猫では90%以上の皮膚糸状菌症がこれに由来します
  • Nannizzia gypsea(M. gypseum)(土壌好性菌)
     → 特に犬で検出されることがあり
  • Trichophyton mentagrophytes(動物好性菌)
     → 小型哺乳類やエキゾチックアニマルで多い

皮膚糸状菌は、毛包や皮膚の表層(角質層)に感染し、脱毛や炎症を引き起こします
特に、免疫力の弱い若齢動物、ストレス環境下、基礎疾患を抱える子で発症しやすいのが特徴です。


🩺 どんな症状が出るか?

皮膚糸状菌症の症状は以下のように現れます。

  • 環状の赤み(紅斑)と円形脱毛
  • フケ(鱗屑)やかさぶたの形成
  • 重症化すると皮膚糸状菌性偽菌腫(Kerion)を形成し、強い炎症や膿瘍に
  • かゆみの強さは症例によってさまざま

軽症では脱毛とフケだけで気づきにくいこともありますが、放置すると悪化し、他の動物や人への感染源にもなり得ます。


🔬 どうやって診断する?

皮膚糸状菌症の診断には、複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。

検査内容特徴
ウッド灯検査特殊な紫外線をあてて観察M. canisはアップルグリーンに蛍光。簡便だが、陰性でも否定できない
直接鏡検抜毛や掻爬検体を顕微鏡で観察分節分生子や菌糸を検出できれば即診断可能
培養検査(DTM培地)真菌を培養して菌種を同定治療モニタリングにも有用
PCR検査真菌DNAを検出高感度だがキャリア状態でも陽性になることあり

正確な診断のためには、複数の方法を併用することが推奨されています。


💊 どんな治療をする?

皮膚糸状菌症の治療には、局所療法・全身療法・環境整備の3本柱が重要です。

🟢 局所療法(外用薬)

  • ミコナゾール+クロルヘキシジン配合のシャンプーを週2回使用
  • ケトコナゾールクリームなどの局所塗布も併用

🟠 全身療法(内服薬)

  • 第一選択はイトラコナゾールまたはテルビナフィン
     (毎日投与、または隔週パルス投与)
  • 副作用モニタリング(肝機能など)を行いながら安全に使用します

🔴 環境管理

  • 汚染被毛の除去(必要に応じて部分剃毛
  • 住環境の徹底消毒(洗えるものは洗浄、できないものは消毒剤で処理)
  • 多頭飼育の場合は隔離管理(ただし社会化に配慮)

⚡ 治療完了の目安

  • 臨床症状の消失
  • 培養検査2回連続陰性(推奨)

症状が改善しても、治療はさらに1ヶ月程度継続することが理想的です。


🏠 ポイント

皮膚糸状菌症は適切に治療すれば完治可能な病気ですが、
逆に環境対策が不十分だと、治ったと思ってもすぐ再発してしまうこともあります。

  • 早期発見・早期治療がカギ
  • 他のペットやご家族への感染予防も大切
  • 治療中のシャンプーや環境整備は根気よく!

症状が軽くても油断せず、気になる脱毛や皮膚の赤みがあれば、
ぜひ一度ご相談ください。


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