進行した歯周病でも「歯を残せるケース」はある
犬の歯周病というと、「悪い歯は抜くしかない」と思われがちです。
しかし実際には、条件が整えば歯を温存し、骨の再生を目指す治療が可能なケースもあります。
今回ご紹介するのは、4歳ミニチュアダックスフントの歯周病症例です。
🐶主訴|口臭と歯ぐきからの出血

来院時の主な症状は
- 口臭が強い
- 歯ぐきからの出血
でした。
外見上はそこまで重度に見えないケースでも、歯周病は歯ぐきの中で進行していることが多いため、全身麻酔下で精密検査を行いました。
診断|右下顎第一後臼歯に中〜重度歯周病

歯科用レントゲンにより、右下顎第一後臼歯周囲に中等度〜重度の歯周病を確認しました。
この歯は
- 咀嚼(噛む)に重要
- 咬合のバランスを支える
機能的に非常に重要な歯です。
治療方針|「抜歯」か「温存」か
通常このレベルの歯周病では、 抜歯が選択されることも多い状態です。
しかし今回は
- 年齢が4歳と若い
- 骨の再生能力が期待できる
- 機能歯である
という点を考慮し、歯を温存する治療を選択しました。
治療内容|歯周組織再生療法
全身麻酔下で以下の治療を実施しました。
① 徹底的な歯周ポケット清掃
- スケーリング
- ルートプレーニング
- 感染組織の除去
② 不要歯の抜歯
炎症の波及を防ぐため、 周囲の小臼歯は抜歯しました。
③ 再生療法(歯を残す処置)
- 歯槽骨再生を目的とした処置
- 歯周組織の回復を促進
最も重要な大臼歯を温存します。
治療7ヶ月後|骨の再生を確認


再検査(歯科レントゲン)にて歯周病で失われた歯槽骨(黄色矢印)が再生していることを確認しました。
さらに
- 歯の安定性改善
- 炎症の消失
- 口臭の改善
も認められました。
現在は歯磨きによる維持が可能な状態となっています。
なぜ「歯を残す治療」が重要なのか
犬にとって歯は
- 食べる
- 噛む
- 顎の安定
に重要な役割があります。
特に大臼歯は“使える歯”として残す価値が高い歯です。
そのため
- 若齢
- 再生可能
- 機能歯
という条件が揃えば、積極的に温存を検討する価値があります
⚠️すべての歯が残せるわけではない
重要なのは、「残せる歯」と「残すべきでない歯」を見極めることです。
無理な温存は感染の持続、周囲歯の悪化、再手術のリスクにつながることがあります。
🐾まとめ|歯周病治療は「抜く」だけではない
- 犬の歯周病でも歯を残せるケースがある
- 若齢犬では骨再生が期待できる
- 機能歯は特に温存価値が高い
- 再生療法で歯槽骨の回復が見込める場合もある
今回の症例のように、適切な判断で歯を守る治療ができることもあります。
🏥歯科診療について
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院
当院では
- 歯科用レントゲンによる精密診断
- 歯周外科
- 再生療法
を組み合わせ、歯科治療を行っています。
「抜歯しかないのか?」と迷われた場合も、判断材料としてご相談ください。