「歯が折れているけど、痛がっていない」それでも要注意
「おもちゃを噛んでいたら歯が欠けていた」
「犬歯が折れている気がするけど、元気そう」
こうしたご相談は、当院でも非常に多く見られます。
しかし、“痛がっていない=大丈夫”という考えは大きな誤解です。
実際に当院では、歯が折れた翌日に受診してくれたことで、神経を残す治療(生活歯髄切断)により歯を温存できた症例がありました。
歯の破折は「早く気づいて、早く治療する」ほど歯を残せる可能性が高くなります。
このコラムでは、犬の歯が折れたときの正しい対処法と治療の流れをわかりやすく解説します。
歯が折れるのは“特別な事故”ではありません
犬の歯はとても丈夫そうに見えますが、実は日常の何気ない瞬間で破折することがあります。
よくある破折の原因を以下にまとめました。
- 硬すぎるおもちゃ・ヒヅメ
- ケージや金属、石を噛む癖
- ボール遊び中の衝突
- 高いところからの転落
- 他の犬との接触・衝突
このように、日常の中にも歯が折れてしまう危険性は隠れています。
また、折れやすい歯も決まっています。
- 上顎犬歯(いわゆるキバ)
- 第四前臼歯(上顎の大きな奥歯)

これらの歯は、「気づいたら欠けていた」「ある日突然短くなっていた」という形で見つかることが少なくありません。
⚠️放置するとどうなる?見た目以上に怖い破折歯
結論:見た目がきれいでも、内部で感染が進行します。
歯の内部には、**神経や血管(歯髄)**が通っています。
歯が折れると、そこから細菌が侵入し、次のような病気に進行することがあります。
- 歯髄炎・根尖性歯周炎
- 歯ぐきの腫れや膿(内歯瘻)
- 口腔鼻腔瘻(口と鼻がつながる状態)
- 慢性的な痛み、食欲低下
これらは数か月〜数年かけて静かに進行するため、気づいたときには抜歯が必要になるケースも少なくありません。
🩺歯が折れたときの正しい対処法
歯の破折に気づいたら、次のポイントを意識してください。
① 無理に歯磨きをしない
破折部位に歯ブラシが当たると痛みを生じることがあります。
折れた歯は無理に歯磨きはしないようにしましょう。
② 歯の破片は捨てない
もしも破片が残っていたら取っておきましょう。
治療方針を決める際の参考になることがあります。
③ 動物病院へ相談
外見がきれいでも、根の中や歯根が折れているケースは非常に多いため、
歯科用レントゲンによる精密検査が不可欠です。
🦷治療は「神経が生きているか」で大きく変わる
破折歯の治療は、神経(歯髄)が露出しているか/感染しているかで選択肢が変わります。
| 破折の状態 | 主な治療 | ポイント |
|---|---|---|
| 非露髄破折(神経露出なし) | 歯冠修復(レジン) | 感染予防・進行防止 |
| 露髄破折(神経露出あり) | 生活歯髄切断/根管治療 | 1〜2日以内なら神経温存可 |
| 感染・根尖病変あり | 根管治療/抜歯 | 徹底した感染除去が必要 |
これらの治療はすべて全身麻酔下で行います。
症例紹介|5歳 小型Mix犬
左上顎第四前臼歯の破折を主訴に来院されました。
折れてしまったのは数日以内ということで、汚染した神経を除去し根管治療を行い、歯を温存することができました。


① 全身麻酔・歯科用レントゲン
まず全身麻酔下で、
- 3本それぞれの歯根
- 神経の状態
- 根の先(根尖)に感染がないか
を歯科用レントゲンで正確に確認します。
② 根管治療(神経の処置)
歯の内部にある神経と感染組織を完全に除去します。
- 3本すべての根管を個別に清掃・消毒
- 細菌を徹底的に除去
- 根管内を無菌状態に近づける
第四前臼歯は3根すべてを確実に処理することが成功の鍵です。
③ 根管充填(封鎖)
清掃後の根管に、
- 薬剤や充填材を入れて
- 再び細菌が入らないよう密閉します
これにより、歯の内部からの再感染を防ぎます。
④ 歯冠修復(レジン修復)
最後に、欠けた歯の部分を歯科用レジン(樹脂)で元の形に修復します。
- 噛む機能の回復
- 破折の再発予防
- 細菌の侵入防止
第四前臼歯は噛む力が強いため、形と強度を意識した修復がとても重要です。
このように、破折歯は発見から診察・治療までが早いほど歯を残せる可能性が高くなります。
🏠自宅で気づくチェックポイント
硬いものを噛む習慣がある犬では、日頃の観察がとても重要です。

- 反対側の歯より短くなっている
- ピンク色の組織(歯髄)が見える
- 歯の先が尖っている・欠けている
- 歯が黒く変色している
1つでも当てはまる場合は、早めに動物病院を受診してください。
🐾まとめ|痛がらない=大丈夫、ではありません
- 犬の歯が折れたら即受診が基本
- 1〜2日以内なら神経を残せる可能性がある
- 放置すると感染が進行し、抜歯リスクが高まる
- 破折歯の治療は時間との勝負
「そのうち治るだろう」は通用しません。
気づいたときが、治療のベストタイミングです。
🏥東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院の歯科診療
当院では、犬の破折歯に対して
歯科レントゲンを用いた精密診断と、
保存治療・歯科外科・再生療法まで一貫した診療を行っています。
「歯をできるだけ残したい」
「今からでも間に合うか知りたい」
そんな方は、お気軽にご相談ください。
📞 03-3403-8012(歯科担当:森田)
📍 東京都渋谷区神宮前