【皮膚】犬の肛門周囲瘻(Perianal fistula)について

こんにちは。皮膚科の馬場です。
専門医試験が終わり、一段落したので、こちらの皮膚投稿を再開していきたいと思います。
一発目は若干マニアックですが、肛門周囲瘻という病気についてです。
ざっくりいうと、肛門周りがぐじゅぐじゅになる病気で、知っていれば診断がつく系の病気です。

病気の概要

肛門周囲瘻とは、肛門やその周囲の組織に炎症が長く続くことで、肛門の内部と皮膚のあいだに「トンネル(瘻管)」ができてしまう病気です。
この瘻管からは膿や分泌液が出て悪臭を放ち、潰瘍や強い痛みを伴うことが多く、わんちゃんの生活の質を大きく下げてしまいます。

病因・発生しやすい犬種

  • 主な原因は 免疫の異常反応 と考えられています。免疫抑制剤が効果を示すことからも、自己免疫的な仕組みが関与していると考えられます。
  • 特に ジャーマン・シェパード・ドッグ に多く見られ、遺伝的素因があるとされています。
  • 他にも、アイリッシュ・セター、コリー、ラブラドール・レトリーバー、ビーグル、ブルドッグ、オールドイングリッシュ・シープドッグなど多くの犬種で報告があります。
  • 発症年齢は中高齢が多く、去勢オスに比較的多いとされています。

※人でも同じような病気があり、肛門直腸の膿瘍やクローン病などに関連して起こることがありますが、犬とは背景が少し異なります。

主な症状

  • 排便時の痛みや排便困難
  • 肛門周囲の潰瘍や膿の排出、悪臭
  • 肛門をしきりに舐める、尾を気にして追いかけるような仕草
  • 出血、便失禁、下痢や便秘の繰り返し
  • 元気消失、体重減少

長毛犬では病変が隠れてしまい、気づくのが遅れることもあります。

治療

治療の基本は 内科的な免疫抑制療法 です。

  • シクロスポリン:もっとも有効とされる治療薬で、長期的な投与で再発を防ぎます。
  • タクロリムス軟膏:局所に塗布する治療薬で、軽症例や維持療法に使用されます。
  • プレドニゾロン(ステロイド)やアザチオプリン:併用されることもあります。
  • オクラシチニブ(アポキル®):最近では数例で有効性が報告されています。

外科手術(病変部切除や肛門嚢摘出など)は、内科治療で改善しない場合に検討されますが、手術単独では再発や合併症(疼痛・狭窄・便失禁など)のリスクがあるため、まずは薬による治療が優先されます。

その他、二次感染に対して抗生物質を短期間使用したり、食事療法(繊維添加や低アレルゲン食)を行うこともあります。

予後

肛門周囲瘻は 慢性で再発しやすい疾患 です。
完全な治癒が難しい場合もありますが、適切な治療を続けることで症状を抑え、再発を防ぎながら良好な生活を送ることができます。
再発率は比較的高いため、長期的な内科的管理(シクロスポリンやタクロリムスの維持療法)が推奨されます。

飼い主さんにとって重要なのは、「この病気は治るまで時間がかかる」「再発することもある」という点を理解し、獣医師と一緒に根気強く治療を続けることです。

皮膚病でお困りの方がいましたら、お気軽にご相談ください。